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療育コラム

2025.12.19

自閉スペクトラムの特性理解|「困った行動」を環境から見直すためのヒント

 

「急にパニックになる」「何度言っても同じことを繰り返す」「お友だちをたたいてしまう」…。自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんと暮らしていると、そんな「困った行動」に戸惑う場面が少なくありません。

ただ、その多くは「子どもの性格が悪い」「しつけが足りない」からではなく、発達特性と、今の環境・関わり方とのミスマッチから生まれていると考えられています。

 

このコラムでは、児童発達支援事業所ゆめラボでの支援の視点も踏まえながら、自閉スペクトラムの特性を理解し、「困った行動」を環境から見直す考え方をやさしくお伝えします。

 

「児童発達支援事業所 自閉症」で情報を探している保護者の方にも、日々の関わり方のヒントとして読んでいただける内容です。

INDEX

自閉スペクトラムの「特性」と「困った行動」をどう捉えるか

 

まずは、「困った行動」をどのような視点で捉え直すといいのかを見ていきます。ここでの考え方が、その後の支援や環境調整の土台になります。

「困った行動」は「特性+環境のミスマッチ」で起こる

自閉スペクトラム症の子どもは、感覚の感じ方や情報の受け取り方、コミュニケーションのスタイルなどに独自の特性があります。そこに、その子にとって分かりにくい環境・要求・ルールが重なると、パニックやかんしゃくなどの「困った行動」として表れやすくなります。

 

つまり、「困った行動」そのものを問題視する前に、「今の環境は、この子にとって分かりやすいだろうか?安心できるだろうか?」という視点で見直していくことが重要です。

「わざと」「甘え」ではなく、脳の特性から理解する

大人から見ると「わざとやっている」「わがままに見える」行動でも、背景には感覚過敏・見通しのなさ・不安の強さなどが隠れていることが多くあります。

「わざと困らせようとしている」のではなく、「どうしていいか分からず、今できる精一杯の方法で助けを求めている」と考えてみると、対応の仕方も変わってきます。

行動の前後(ABC)に注目してみる

応用行動分析(ABA)では、行動を「行動の前(A:きっかけ)」「行動(B)」「行動の後(C:結果)」で整理して考えます。

例えば、A:急に活動が変わる予告なしの「片づけタイム」、B:泣き叫ぶ・物を投げる、C:片づけが中断される/大人の注目が集まる、という流れで起こっている場合には、「見通しがない」「切り替えが急」という環境の要素が行動を誘発している可能性があります。

行動だけを叱るのではなく、A(きっかけ)とC(結果)をどう変えるかを一緒に考えていくことがポイントです。

自閉スペクトラムの主な特性と、日常で起こりやすいつまずき

 

ここでは、自閉スペクトラム症の代表的な特性と、それが日常生活の「困った行動」としてどう現れやすいかを、イメージしやすい形でまとめます。

感覚の過敏さ・鈍さからくる困りごと

音・光・におい・触られ方などに対して、とても敏感だったり、逆に鈍感だったりすることがあります。

例えば、突然のチャイムや大きな声に過剰に驚きパニックになる、服のタグや靴下のゴムが気になりすぎて落ち着かない、動き回ったり強くぶつかるような遊びを好み強い刺激を求める、といった様子が見られることがあります。

 

こうした行動は「我慢が足りない」というよりも、「からだが感じている不快さ・刺激の不足をどうにかしようとしている」結果であることが少なくありません。

ことば・コミュニケーションの難しさ

ことばの理解や、自分の気持ちをことばで表現することが難しい場合、行動そのもので「イヤ」「困っている」を伝えようとすることがあります。

 

例えば、「もうやめたい」「手伝ってほしい」を言葉で伝えられず、物を投げる・逃げる・寝転がる、あるいは人をたたく・大声を出すといった行動でサインを出すことがあります。

このとき、「どうしてそんなことをするの!」と叱る前に、「この行動で、何を伝えようとしているのかな?」と考えてみることが大切です。

見通しのなさ・変化への不安

「これから何が起こるか分からない」「予定が急に変わる」といった状況は、自閉スペクトラムの子どもにとって大きなストレスになりがちです。

スケジュールの変化や、「あとでね」「そのうち」といったあいまいな表現が続くと、不安が高まり、かんしゃくや拒否行動が出やすくなります。

見通しを「見える形」で示していくことが、後の環境調整の大きなポイントになります。

こだわりや興味の偏り

特定の物・遊び・ルールに強いこだわりを持つことも、自閉スペクトラムの特徴の一つです。

同じ動作を繰り返したり、順番や位置が変わると強く嫌がったりする姿は、「頑固」「融通がきかない」と見られがちですが、本人にとっては安心を保つための大切なしくみであることも多くあります。

環境を見直す4つの視点

 

では、「困った行動」を減らすために、どのように環境を見直していけばよいのでしょうか。ここでは、家庭でも児童発達支援事業所でも使いやすい4つの視点を紹介します。

① 空間の環境調整(音・光・におい・人の数)

まず整えやすいのが、「空間」の環境調整です。

例えば、人と物が多すぎる場所を避けて静かなコーナーを用意する、蛍光灯のまぶしさが苦手な場合は間接照明やスタンドライトを使う、においが強い柔軟剤や芳香剤を控える、といった工夫だけでも、パニックや多動が和らぐことがあります。

「どの場面で落ち着きにくいか」を観察しながら、少しずつ調整していきましょう。

② 時間の見通しを「見える化」する

「いつ始まって、いつ終わるのか」「このあと何があるのか」が分かると、不安はぐっと減ります。TEACCHプログラムでも、活動の流れを視覚的に示す「構造化」が重要な柱の一つとされています。

家庭では、1日の流れを写真やイラストのスケジュールにして貼る、「あと5分で終わりだよ」などタイマーを使って予告する、「今」「次」「その次」と3段階で予定を見せる、といった工夫が有効です。

「ダラダラしている」ように見える場面も、見通しが持てるようになるとスムーズに動けることがあります。

③ 活動や課題を小さく分けて提示する

「片づけしよう」「宿題やって」と大きなまとまりで伝えられると、どこから始めていいか分からず、拒否や逃避行動につながることがあります。

そこで、「まずはブロックを箱に入れよう」「次に本を棚に戻そう」と順番に分けて伝える、チェックリストや手順書を用意して終わったらマークをつける、など、スモールステップで「できた」を積み重ねられるようにすることがポイントです。

④ 選択肢を絞り、迷いを減らす

「どれにする?」とたくさんの選択肢を一度に示されると、情報処理に時間がかかり、固まってしまったりイライラしたりすることがあります。

例えば、おやつは「2つの中から1つ選ぶ」にする、服はあらかじめコーディネートしたものを3セットだけ見せる、といったように、「選ぶ」場面を減らす・選択肢を絞るだけでも、困りごとが減るケースがあります。

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児童発達支援事業所だからできる、自閉スペクトラムへの環境支援

 

「児童発達支援事業所 自閉症」で情報を探している保護者の方にとって、専門職がいる場で、環境と特性を一緒に整理してもらえることは大きな安心材料になると思います。ここでは、児童発達支援事業所ゆめラボで大切にしている視点を紹介します。

個別アセスメントで特性と環境を把握する

まずは、お子さんの得意・苦手、興味、行動の出やすい場面を丁寧にアセスメント(評価)します。

そのうえで、どんな感覚刺激が負担になっていそうか、どんな伝え方なら理解しやすそうか、どのタイミングで「困った行動」が出やすいか、といった点を丁寧に把握し、「お子さんの特性×環境」の視点で支援計画を立てていきます。

視覚支援・構造化をチームで統一する

TEACCHなどの考え方をベースに、スケジュールや作業手順の「見える化」を行うことで、「次に何をすればよいか」が分かりやすい環境を整えます。

また、スタッフ間で支援方法を共有し、なるべく一貫した声かけ・ルールで関わることも大切にしています。大人によって対応がバラバラだと、子どもは混乱しやすくなるためです。

保護者と「家庭の環境設定」を一緒に考える

児童発達支援事業所だけで完結する支援ではなく、ご家庭での困りごと・生活リズムも一緒に伺いながら、「おうち版・環境調整プラン」を一緒に考えます。

例えば、朝の支度をスムーズにするための手順表を一緒に作る、きょうだいとのトラブルを減らすために遊びスペースの工夫を考える、かんしゃくが起きた時の大人の対応を家族で統一しておく、といった、「明日からちょっとやってみようかな」と思えるレベルの工夫から一緒に取り組んでいきます。

園や学校・関係機関との連携

幼稚園・保育園・こども園・学校など、お子さんが過ごす他の場とも情報を共有し、できるだけ一貫した支援になるように連携していきます。

児童発達支援事業所でうまくいっている環境調整や視覚支援を、園・学校にも持ち込むことで、「ここではできるけど、あっちではできない」というギャップを少しずつ小さくしていくことを目指します。

ご家庭でできる「環境からのアプローチ」

 

最後に、保護者の方が今日から試せる、環境を通したアプローチのヒントをまとめます。どれも完璧にやる必要はなく、「できそうなものから少しずつ」で大丈夫です。

1日の流れをシンプルに整える

「起きる → 朝ごはん → 着替え → 登園」のように、生活の流れをできるだけシンプルにすることは、それだけで大きな環境調整になります。

朝の支度の途中にテレビやゲームが入ると、切り替えが難しくなり、「行きたくない」「イヤだ!」という行動につながりやすくなります。まずは、「この時間帯はこれだけ」と決めるところから始めてみましょう。

「できていること」に注目して言葉をかける

困った行動に目が向きやすい毎日だからこそ、うまくいっている小さな場面に注目して、言葉で伝えることがとても大切です。

例えば、「さっき、自分からおもちゃ片づけられたね」「イヤだったけど、ことばで教えてくれて助かったよ」といった声かけは、「こうするといいんだ」という手がかりになり、望ましい行動を増やしていく力になります。

困ったときのサインや避難場所を一緒に決めておく

「もう無理」「しんどい」と感じたときに、たたいたり叫んだりする前に使える、サインや避難場所を一緒に決めておくのも一つの方法です。

例えば、カードやジェスチャーで「休憩」「やめたい」を伝える合図を決めておくことや、クッションやお気に入りの物がある「落ち着けるコーナー」を作っておくことなどにより、「困った行動」そのものではなく、落ち着くための行動で気持ちを切り替えられるようにしていきます。

まとめ|自閉スペクトラムの特性理解と環境調整は、一人で抱え込まなくて大丈夫です

 

自閉スペクトラム症のお子さんの「困った行動」は、多くの場合、発達特性と環境のミスマッチから生まれています。
お子さんの特性を理解し、空間・時間・活動・人との関わり方といった環境を少しずつ整えていくことで、行動そのものが変わっていくことが少なくありません。

 

とはいえ、毎日の子育てのなかで、保護者の方が一人で原因を分析し、環境を整えていくのは簡単なことではありません。
「児童発達支援事業所 自閉症」でお調べの方は、ぜひ専門職がいる場も上手に頼りながら、一緒に環境づくりを進めていきましょう。

 

児童発達支援事業所ゆめラボでも、自閉スペクトラムのお子さんや保護者の方と一緒に、特性理解と環境調整をベースにした支援を行っています。

「うちの子の行動は、どこから見直したらいいのかな?」「家庭でできる工夫を一緒に考えてほしい」と感じられた方は、見学・無料相談からお気軽にお問い合わせください。

児童発達支援事業所ゆめラボでお子さんとご家族のペースに合わせて、一歩ずつサポートさせていただきます。

 

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