「何度言っても片付けない」「おもちゃを出したまま次の遊びを始めてしまう」「片付けの時間になると怒ったり泣いたりする」など、子どもの片付けに悩む保護者の方は少なくありません。
発達が気になる子どもや発達障害の特性がある子どもの場合、片付けできない姿だけを見ると、わがまま、やる気がない、聞いていないように見えることがあります。しかし実際には、遊びを終える切り替えが難しい、何をどこに戻すのか分かりにくい、声かけが抽象的で動き出せないなど、いくつかの理由が重なっている場合があります。
片付けは、単に物を元の場所へ戻す行動ではありません。遊びを終える、次の行動を受け入れる、目の前の物を見分ける、場所を思い出す、手を動かす、終わったことを確認するという複数の力が関係します。そのため、発達特性のある子どもにとっては、大人が思う以上に負担が大きい場面になりやすいのです。
このページでは、児童発達支援事業所ゆめラボの視点から、発達が気になる子が片付けができない背景と、家庭でできる声かけ、片付けしやすい環境づくり、療育につなげる関わり方について解説します。
INDEX
片付けができない理由は、子どもによって異なります。大人にとっては「使った物を戻すだけ」に見える行動でも、子どもにとっては、遊びを終えること、物の場所を判断すること、手順通りに動くことが同時に求められる場面です。
特に発達が気になる子どもは、言葉だけの指示では動きにくかったり、次の行動への切り替えに時間がかかったりすることがあります。片付けできない姿を叱る前に、どこで止まっているのかを見ることで、家庭での関わり方を変えやすくなります。
大人が使う「片付けて」という言葉は、子どもにとって範囲が広い言葉です。おもちゃを箱に入れることなのか、絵本を棚に戻すことなのか、床に落ちた物を拾うことなのか、子どもがすぐに判断できない場合があります。
発達が気になる子の中には、言葉の意味を場面に合わせて理解することが苦手な子もいます。「片付けなさい」と言われても、何をどうすればよいのか分からず、結果として動かないように見えることがあります。
この場合は、「赤い車を箱に入れよう」「絵本をこの棚に戻そう」のように、物と場所をはっきり伝える方が動きやすくなります。片付けの意味を生活の中で少しずつ覚えていく段階だと考えると、保護者の声かけも変えやすくなります。
片付けの時間は、子どもにとって楽しい遊びが終わる時間でもあります。まだ遊びたい気持ちが強いと、片付けそのものが嫌なのではなく、「終わり」を受け入れることが難しくなります。
発達特性のある子どもは、予定の変化や活動の切り替えに不安を感じやすい場合があります。急に「はい、片付け」と言われると、気持ちが追いつかず、泣く、怒る、逃げる、無視するような行動につながることがあります。
このようなときは、いきなり終わらせるのではなく、「あと1回走らせたら車を戻そう」「タイマーが鳴ったらブロックを箱に入れよう」と、終わりの目印を先に伝えることが有効です。見通しがあるだけで、子どもが次の行動を受け入れやすくなることがあります。
床におもちゃがたくさん出ている状態では、子どもはどこから手をつければよいか分からなくなることがあります。大人は全体を見て片付けの流れを考えられますが、子どもは目に入った物の多さに圧倒されてしまうことがあります。
「全部片付けて」と言われると、やることが多すぎて動き出せない子もいます。特に注意がそれやすい子や、順番に行動することが苦手な子は、最初の一歩が見えないだけで止まってしまいます。
その場合は、「まず車だけ」「次はぬいぐるみだけ」のように、片付ける物を一種類に絞ると始めやすくなります。子どもが自分だけで動き出すのが難しいときは、大人が最初の行動を見せることも助けになります。
片付けの苦手さには、見通し、注意、記憶、手先の動き、感覚の受け取り方など、さまざまな発達の要素が関係します。片付けだけを練習すれば必ずできるようになるわけではなく、子どもがどの部分で困っているのかを見ることが必要です。
家庭で同じ声かけを続けても変わらない場合は、本人の性格ではなく、伝え方や環境が合っていない可能性があります。発達の特性を知ることで、叱る回数を減らし、子どもが動きやすい方法を見つけやすくなります。
片付けには、「今の遊びを終える」「使った物を戻す」「次の行動に移る」という流れがあります。この流れが頭の中でつながりにくい子は、片付けの必要性を感じにくくなります。
見通しを持つことが苦手な子は、今やっている遊びに気持ちが向いているため、次の予定を言葉だけで伝えられても受け止めにくいことがあります。「片付けたらごはん」「片付けたらお風呂」のように、次に何があるのかを短く伝えると、行動の意味が見えやすくなります。
見通しは、繰り返しの中で身につきやすい力です。毎回同じ流れで声をかける、片付けの前に合図を決める、終わったあとに次の行動をすぐ始めるなど、家庭でも流れを同じにすると子どもが理解しやすくなります。
片付けを始めても、途中で別のおもちゃに気づいて遊び始める子もいます。これは、ふざけているのではなく、目に入った刺激に注意が移りやすいことが関係している場合があります。
たとえば、ブロックを箱に入れている途中で別の人形が目に入り、その人形で遊び始める。絵本を棚に戻そうとして、気になるページを開いてしまう。このような姿は、片付けの途中で目的を保つことが難しい状態です。
この場合は、大人がそばで「今は車を入れる時間だよ」と短く声をかけるだけでも、元の行動に戻りやすくなります。長く説明するよりも、今やる行動を一つだけ伝える方が、子どもには届きやすいことがあります。
片付けには、物の場所を覚える力も必要です。車は箱、絵本は棚、ぬいぐるみはかごというように、物ごとに戻す場所が違うと、子どもには負担が大きくなります。
発達が気になる子の中には、場所の記憶や手順の記憶が苦手な子もいます。何度教えても戻す場所を間違える場合、覚えていないのではなく、場所を思い出す手がかりが足りない可能性があります。
写真やイラストを貼る、同じ種類のおもちゃを同じ箱に入れる、戻す場所を毎回変えないなど、目で見て分かる工夫があると、子どもが自分で動きやすくなります。片付けの仕組みを子どもに合わせることで、声をかけすぎなくても動きやすくなります。
片付けが苦手な子には、声かけを変えるだけで動きやすくなることがあります。子どもが動かないときほど、大人は「早くして」「何回言えば分かるの」と言いたくなりますが、その声かけでは子どもが何をすればよいか分からないままになることがあります。
行動を小さく分ける考え方については、発達が気になる子のスモールステップ療育|「できた」を増やす家庭での関わり方でも紹介しています。
片付けでも同じように、子どもが始めやすい一歩に変えることがポイントです。
「おもちゃを片付けて、手を洗って、ごはんを食べるよ」のように、一度に複数の行動を伝えると、子どもは最初に何をすればよいか分からなくなることがあります。特に言葉の指示を覚えておくことが苦手な子は、途中で内容が抜けてしまいます。
片付けの場面では、まず一つだけ伝えます。「ブロックを箱に入れよう」「車をここに置こう」のように、今すぐできる行動に絞ります。ひとつ終わってから次を伝える方が、子どもは動きやすくなります。
声かけを短くすることは、子どもを甘やかすことではありません。理解しやすい形に変えることで、子どもが自分で行動できる場面を増やす関わりです。
「片付けて」ではなく、「青いブロックを箱に入れる」「絵本を棚に戻す」「床のぬいぐるみをかごに入れる」のように、行動が分かる言葉に変えると、子どもは動きやすくなります。
子どもが言葉だけで分かりにくい場合は、大人が一つ見本を見せます。「これはここに入れるよ」と見せてから、「次は一緒にやってみよう」とつなげると、子どもがまねしやすくなります。
片付けの最初から最後まで一人でやらせる必要はありません。最初は大人が半分手伝い、最後の一つだけ子どもが入れる形でも構いません。できた感覚を持てる経験が、次の行動につながります。
片付けが苦手な子にとって、最後まで完了することだけを評価されると、途中のがんばりが見えにくくなります。箱に一つ入れた、声をかけたら戻ってきた、泣かずに手を伸ばしたなど、小さな行動をその場で認めることが必要です。
「車を入れられたね」「今、箱まで持って行けたね」と、できた行動を言葉にすると、子どもは何がよかったのか分かりやすくなります。ほめる言葉が行動と結びつくことで、次も同じ行動をしやすくなります。
反対に、片付け終わったあとで「やっとできたね」と言うと、子どもにはできた喜びよりも責められた感覚が残る場合があります。できた瞬間に短く認めることが、片付けへの抵抗感を減らす一歩になります。
片付けを子どもの努力だけに任せると、毎日同じところでつまずきやすくなります。発達が気になる子どもには、物の場所が見て分かり、迷わない量にしておくことが助けになります。
環境を変えると、声かけを減らせる場合があります。保護者が何度も言わなくても、子どもが見て分かる状態に近づけることで、片付けは生活の中に入りやすくなります。
子どもが片付けしやすくなるためには、物の場所がはっきりしていることが必要です。箱や棚に写真を貼る、同じ種類の物を同じ場所に戻す、よく使うおもちゃは子どもの手が届く場所に置くなど、目で見て分かる形にします。
文字が読めない年齢の子どもには、写真やイラストの方が伝わりやすい場合があります。車の箱には車の写真、ブロックの箱にはブロックの写真を貼ると、戻す場所を自分で判断しやすくなります。
戻す場所が毎回変わると、子どもは覚えにくくなります。大人の都合で場所を変えるよりも、子どもが迷わず戻せることを優先すると、片付けの成功が増えやすくなります。
片付けが苦手な子にとって、出ているおもちゃの量が多いことは大きな負担になります。目に入る物が多いほど、注意が移りやすく、どれから戻せばよいか分かりにくくなります。
いつもすべてのおもちゃを出せる状態にするのではなく、その日に使う物を少なくするだけでも、片付けに取りかかりやすくなります。箱の中がいっぱいで入れにくい場合も、子どもは途中であきらめやすくなります。
片付けがうまくいかないときは、子どもの力だけを見るのではなく、出ている物の量も見直します。片付ける量が減ると、最後まで終えられる経験を積みやすくなります。
片付けの流れが見えると、子どもは次に何をするか分かりやすくなります。たとえば、「ブロックを入れる」「車を入れる」「絵本を棚に戻す」という順番を写真で示すと、言葉だけよりも伝わりやすくなります。
タイマーや砂時計を使う方法もあります。「音が鳴ったら片付ける」「砂が落ちたらおしまい」のように、終わりの目印が見えると、急に遊びを止める負担が減ります。
時間の見通しが持ちにくい子への関わり方は、発達障害のある子どもが時計を読めない・時間の感覚がつかみにくいときの療育でも紹介しています。
片付けも、時間や順番を見える形にすることで取り組みやすくなります。
片付けは、家庭の中で毎日くり返される生活場面です。だからこそ、子どもに合った関わり方をすると、生活習慣だけでなく、見通し、切り替え、手先の動き、ことばの理解、親子のやりとりにもつながります。
児童発達支援では、片付けを単なる生活ルールとして見るだけではなく、発達のどの力と関係しているのかを見ながら支援します。
5領域の視点については、児童発達支援事業所の5領域プログラムとは?療育で大切にする5つの視点でも詳しく紹介しています。
片付けは、一度教えたらすぐできるようになるものではありません。毎日の生活の中で、同じ流れをくり返しながら少しずつ身につけていく力です。
最初は、一つだけ箱に入れる、保護者と一緒に棚まで持っていく、最後の一個だけ戻すといった形でも十分です。子どもが「できた」と感じる経験を増やすことで、片付けへの苦手意識が弱まりやすくなります。
生活習慣として考えると、完璧に片付けることよりも、片付けの流れに参加できたかどうかが重要です。家庭で続ける場合も、子どもが無理なく参加できる形から始めることが現実的です。
片付けは、遊びから次の行動へ移る練習にもなります。遊びを終える、物を戻す、次の予定に進むという流れは、園生活や就学後の生活にも関係します。切り替えが苦手な子どもは、片付けのたびに気持ちが崩れることがあります。その場合は、片付けを叱る場面にするのではなく、切り替えを練習する場面として見ていきます。
「あと一回で終わり」「これを入れたらお茶にしよう」「一緒に戻したら次の遊びを選ぼう」のように、終わりと次の行動をつなげて伝えると、子どもは受け入れやすくなります。
片付けを子どもだけに任せると、できない場面が増え、親子ともに疲れやすくなります。最初から一人でやらせるのではなく、一緒に取り組む時間として始めると、子どもは安心して動きやすくなります。
「ママは絵本、〇〇ちゃんは車を入れよう」「先生役になって、どこに戻すか教えてくれる?」のように、やりとりを入れると、片付けが命令だけの時間になりにくくなります。保護者が毎回すべて手伝う必要はありません。子どもができる部分を少しずつ増やしながら、必要なところだけ手を貸す形にすると、片付けは親子の負担になりにくくなります。
家庭での困りごとが続くときは、児童発達支援事業所の療育って何が変わる?「家庭がラクになる」理由も参考になります。
家庭だけで抱え込まず、子どもの特性に合う関わり方を一緒に考えることができます。
片付けができない姿は、単なる生活習慣の問題に見えることがあります。
しかし、発達が気になる子どもの場合、切り替えの苦手さ、見通しの持ちにくさ、言葉の理解、注意のそれやすさ、手順の分かりにくさなどが関係している場合があります。
毎日叱っているのに変わらない、片付けのたびに泣く、園でも身の回りのことが進みにくいと言われる、遊びから次の行動へ移れないといった姿が続くときは、子どもに合った支援の方法を見直す目安になります。
ゆめラボでは、未就学のお子さま一人ひとりの発達段階や特性に合わせて、個別療育を行っています。片付けのような生活場面も、見通し、切り替え、ことばの理解、手先の動き、親子の関わりなど、複数の視点から見ていきます。
「片付けができないだけで相談していいのかな」と迷う保護者の方もいらっしゃいますが、日常の小さな困りごとは、子どもの発達を知る大事な手がかりになります。家庭での声かけを変えても難しさが続く場合は、早めにご相談ください。
ゆめラボでは、見学やご相談を受け付けています。
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