「家の中でも声が大きくなりやすい」「園やお店で声のボリュームを下げるのが難しい」「注意すると、さらに大きな声になってしまう」。
ADHD(注意欠如・多動症)の特性があるお子さまに、このような様子が見られることがあります。
声が大きくなる姿だけを見ると、「わざと騒いでいるのかな」「何度言っても直らない」と感じてしまうかもしれません。
しかし、ADHD傾向のあるお子さまの場合、興奮したときに自分の声の大きさに気づきにくいことや、周囲の刺激に反応して声量が上がりやすいことがあります。
このページでは、ADHDの子どもの声が大きくなる理由と、家庭でできる声のボリューム調整の支援について、児童発達支援事業所ゆめラボの視点から解説します。
ADHDの特性があるお子さまは、不注意、多動性、衝動性などの影響により、その場の状況に合わせて行動を調整することが苦手な場合があります。
声の大きさも同じです。
「今は小さい声で話す場所」「ここでは普通の声でよい場所」「遊びの中では大きな声を出してもよい場面」といった違いは、大人にとっては自然に判断できても、子どもにとっては経験を重ねながら身につけていく力です。
特にADHD傾向のあるお子さまは、気持ちが高ぶったときや周囲に刺激が多い場面で、声のボリュームを自分で下げることが難しくなることがあります。
好きな遊びや楽しい話題になると、気持ちが一気に盛り上がり、声が大きくなることがあります。
このとき、本人は「大きな声を出そう」と考えているわけではありません。伝えたい気持ちが強くなり、声の大きさまで意識が向きにくくなっている状態です。
大人が「声が大きいよ」と伝えても、子ども自身はどのくらい大きかったのかが分からず、同じ声量をくり返すことがあります。
そのため、叱って止めるだけではなく、「今の声はお部屋の声より大きかったね」「次は隣の人に聞こえるくらいで話そう」と、声の大きさを具体的に伝えることが必要です。
テレビの音、きょうだいの声、外の車の音、人が多い場所のざわざわした雰囲気など、周囲に刺激が多いと、子どもの声も大きくなりやすくなります。
周りの音に負けないように話そうとして、無意識に声のボリュームが上がることがあります。
また、音や動きが多い環境では、自分の声を聞き取りにくくなる子もいます。
大人から見ると「急に騒いだ」ように見えても、子どもにとっては周囲の刺激に反応して声が大きくなっている場合があります。
声の大きさを調整するには、「どこにいるのか」「誰と話しているのか」「今はどんな場面なのか」を見て判断する力が必要です。
家庭、園、病院、図書館、電車、お店では、求められる声の大きさが変わります。
ADHD傾向のあるお子さまは、今していることや興味のあるものに注意が向きやすく、場面の違いまで意識が向きにくいことがあります。
そのため、「静かにして」だけではなく、「病院では小さい声」「公園では元気な声」「家の中では普通の声」のように、場面と声量を結びつけて伝える関わりが役立ちます。
ADHDの子どもの声が大きくなる場面には、いくつかの共通点があります。
ただ「声が大きい子」と見るのではなく、どの場面で声量が上がりやすいのかを見ていくと、家庭での関わり方を考えやすくなります。
恐竜、電車、ゲーム、キャラクター、園であった出来事など、好きな話題になると、話したい気持ちが強くなります。
ADHD傾向のあるお子さまは、興味のあることに気持ちが向くと、話す速さや声の大きさを自分で調整しにくくなることがあります。
このとき、「うるさい」と止めるだけでは、子どもは何を変えればよいのか分かりにくいです。
「その話を聞きたいから、座っている人に聞こえる声で話してみよう」と伝えると、話したい気持ちを否定せずに声量へ意識を向けやすくなります。
追いかけっこ、ごっこ遊び、ボール遊び、きょうだいとの遊びなど、体を動かす活動では声が大きくなりやすいです。
楽しい気持ちが強くなると、声も動きも大きくなり、途中で止めることが難しくなる場合があります。
遊びの前に「この部屋では普通の声」「外に出たら元気な声」と伝えておくと、子どもは声の出し方を選びやすくなります。
遊びが始まってから強く注意するよりも、始まる前に声のルールを短く確認する方が入りやすい子もいます。
ショッピングモール、病院の待合室、飲食店、親族の集まりなど、人や音が多い場所では声の大きさが上がることがあります。
周囲がにぎやかだと、子どもは「これくらい大きな声で話さないと聞こえない」と感じる場合があります。
また、人が多い場所では、気になるものが次々と目に入り、気持ちが落ち着きにくくなります。
出かける前に「お店の中では近くの人に聞こえる声」「困ったら手をつないで教えてね」と伝えておくと、声の大きさだけでなく行動の目安も持ちやすくなります。
「静かにしなさい」「声が大きい」と注意されたあとに、さらに声が大きくなることがあります。
これは反抗だけで起きているとは限りません。驚いた、恥ずかしかった、何を直せばよいか分からなかったという気持ちが重なり、声として出ている場合があります。
注意するときは、遠くから大きな声で言うより、近づいて短く伝える方が伝わりやすくなります。
「声を小さくして」だけでなく、「今はレベル1の声にしよう」「耳の近くではなく、顔を見て話そう」と、次に取る行動を伝えることが大切です。
声のボリューム調整は、一度注意すればすぐにできるようになるものではありません。
子どもが自分の声の大きさに気づき、場面に合わせて変える経験を重ねることで、少しずつ身についていきます。
「静かにして」は、子どもにとって分かりにくい言葉になることがあります。
どのくらい小さくすればよいのか、話してはいけないのか、ささやき声なのか、普通の声なのかが分からないためです。
家庭では、声の大きさを数字や手の幅で表す方法が使いやすいです。
例えば、レベル0は声を出さない、レベル1はひそひそ声、レベル2は家の中の声、レベル3は外遊びの声というように、家族で同じ言い方を決めておくと伝わりやすくなります。
大切なのは、注意する場面だけで使わないことです。
落ち着いているときに「これはレベル2の声だね」「外ではレベル3でも大丈夫だね」と確認しておくと、子どもは声の違いを体験として覚えやすくなります。
声の大きさは、場所によって変わります。
家の中、玄関、車の中、病院、お店、公園では、使いやすい声のレベルが違います。
あらかじめ「ここではどの声が合うかな」と一緒に確認すると、子どもは場面と声の大きさを結びつけやすくなります。
大人が一方的に決めるよりも、子どもが選ぶ形にすると、納得して取り組みやすくなることがあります。
例えば、病院へ行く前に「待合室ではレベル1かレベル2の声にしよう」と伝えます。
公園へ行く前には「外では元気な声で大丈夫。でも、人の耳の近くでは小さい声にしよう」と伝えると、同じ大きな声でも場面によって使い分ける経験につながります。
声の大きさを下げられたときは、その場で具体的に伝えることが大切です。
「えらいね」だけでは、子どもは何がよかったのか分かりにくい場合があります。
「今、レベル2の声で話せたね」「近くの人に聞こえる声で言えたね」「声を小さくしてもう一回言えたね」と、できた行動をそのまま言葉にします。
すると、子どもは自分が調整できたことに気づきやすくなります。
声かけの内容を見直したい方は、子どもが安心する声かけの工夫|児童発達支援事業所ゆめラボの言語化支援とは?もあわせてご覧ください。
児童発達支援では、声の大きさだけを切り取って練習するのではなく、場面理解、相手との距離、気持ちの高まり、伝えたい内容などを合わせて見ていきます。
声が大きくなる背景を知ることで、子どもに合った関わり方を考えやすくなります。
ゆめラボでは、遊びややりとりの中で、声の大きさを変える経験を取り入れます。
動物の声まね、店員さんごっこ、先生役と子ども役のやりとり、絵カードを使った場面練習などを通して、楽しく声の出し方を変える経験につなげます。
「小さく言ってみよう」「次は元気な声で言ってみよう」と活動の中で試すことで、子どもは声の違いを体で覚えやすくなります。
注意される場面だけで声量を意識するのではなく、できた経験として積み重ねることが大切です。
声が大きくなりやすい子どもは、相手との距離をつかみにくいことがあります。
すぐ隣にいる人にも遠くの人へ話すような声量になったり、反対に遠くの人へ小さな声で話して伝わらなかったりすることがあります。
療育では、相手との距離を変えながら「この距離ならどの声が聞こえやすいか」を経験します。
声の大きさを注意するだけでなく、相手の表情を見る、近くで話す、順番に話すといったコミュニケーションの土台も一緒に育てていきます。
子どもが声のボリュームを調整しやすくなるには、家庭と園で使う言葉が大きく違いすぎないことも大切です。
家庭では「レベル2の声」、園では「お部屋の声」といった言い方がある場合でも、子どもが混乱しないように、意味をつなげていきます。
ゆめラボでは、保護者の方から家庭や園での様子を聞きながら、その子に伝わりやすい声かけを一緒に考えます。
「静かにして」では動きにくい子には、「近くの人に聞こえる声」「先生に聞こえる声」「耳が痛くならない声」など、子どもがイメージしやすい言葉へ置き換えていきます。
声の大きさだけでなく、話を聞くことや指示理解にも困りがある場合は、ADHDの子が話を聞くのが苦手な本当の理由は?支援のポイントも参考になります。
ADHDの子どもの声が大きくなるのは、性格やしつけだけの問題ではありません。
興奮したときに自分の声量へ気づきにくいこと、周囲の音や人の多さに反応しやすいこと、場面に合う声の大きさを判断する経験がまだ少ないことが関係している場合があります。
家庭では、「静かにして」とくり返すよりも、声の大きさを見える形で伝え、場面ごとの声のレベルを一緒に決め、できた瞬間を具体的に認める関わりが役立ちます。
声のボリューム調整は、注意されて覚える力ではなく、安心できるやりとりの中で少しずつ育つ力です。
ゆめラボでは、ADHD傾向のあるお子さまの行動やコミュニケーションの背景を見ながら、声量調整、場面理解、相手との距離感、家庭での声かけまで一緒に考えています。
お子さまの声の大きさや園・家庭での関わりに悩んでいる方は、お気軽にご相談ください。
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