放課後等デイサービスでABA療育にふれる中で、「教室では切り替えられるのに、家ではゲームをやめられない」「宿題の声かけをすると怒ってしまう」「注意すると泣く、黙る、強く反発する」と悩まれる保護者さまは少なくありません。
小学生になると、学校、宿題、家庭での約束、友だち関係など、自分で考えて動く場面が増えていきます。その中でうまく動けない姿が出ると、つい「やる気がない」「わがまま」「何度言っても聞かない」と見えてしまうことがあります。
ABA療育では、行動だけを見て叱るのではなく、その行動の前に何があったのか、行動のあとに何が起きているのかを見ながら、お子さまが動きやすい環境と関わり方を考えます。
このページでは、児童発達支援事業所ゆめラボの療育スタッフとして、ABA療育を家庭で活かす方法を、小学生の困った行動に合わせて解説します。
INDEX
ABA療育と聞くと、専門的なプログラムや特別な訓練を思い浮かべる方もいます。しかし家庭で活かすときに大切なのは、難しい言葉を覚えることではありません。
お子さまが困った行動をしたときに、すぐに叱るのではなく、「何がきっかけだったのか」「そのあと何が起きたのか」「次はどんな形なら動きやすいのか」を見ていくことが出発点になります。
ABAでは、行動を「良い」「悪い」で決めつけるのではなく、行動が起きる前と後に注目します。
例えば、宿題を始めようとした瞬間に怒り出す場合、宿題そのものが嫌いというより、量が多く見えて不安になっている、どこから始めればよいか分からない、学校で疲れ切っていて切り替える力が残っていない、ということがあります。
ゲームをやめられない場合も、ただ我慢が苦手なのではなく、終わりの時間が見えていない、次に何をするのか分からない、やめたあとに楽しみがなく気持ちが向きにくい、という背景が隠れていることがあります。
行動の前後を見ると、「もっと強く言う」以外の関わり方が見つかります。声かけを短くする、先に終わりを知らせる、取りかかる量を減らす、できた直後に伝えるなど、家庭で変えられる部分が分かります。
放課後等デイサービスでうまくいった行動が、家庭ですぐに同じように出るとは限りません。教室と家庭では、場所も人も時間帯も、お子さまの疲れ具合も違います。
それでも、教室で合っていた声かけや見通しの出し方を家庭でも取り入れることで、お子さまは「この言葉が出たら次はこれをするんだ」と分かりやすくなります。
家庭だけで試行錯誤を続けると、保護者さまが疲れてしまうことがあります。放課後等デイサービスでの様子を家庭の関わりに反映させることは、お子さまのためだけでなく、保護者さまが一人で抱え込まないためにも大切です。
家庭での声かけや面談での相談については、放課後等デイサービスの保護者支援と家庭連携の記事でも紹介しています。ABA療育を家庭で続けたいときも、教室との情報共有が大きな助けになります。
家庭での困った行動は、毎日の生活の中でくり返し起こるため、保護者さまにとって大きな負担になりやすいものです。
ここでは、小学生のご家庭で相談が多い場面を取り上げながら、ABA療育の視点でどこを見るとよいかをお伝えします。
宿題に取りかかれない姿は、やる気の問題だけではありません。プリントの量を見ただけで気持ちが重くなる、間違えることが不安、何から始めるか決められない、遊びから学習への切り替えが難しいなど、行動の前に負担が重なっていることがあります。
この場合、最初から「早く宿題をしなさい」と伝えるよりも、始める前のハードルを下げることが大切です。机に座る、筆箱を出す、名前を書く、1問だけ解くというように、最初の行動を小さくします。
始められた直後に「今、名前を書けたね」「1問目に取りかかれたね」と伝えると、お子さまは宿題全体ではなく、できた行動に目を向けやすくなります。
宿題に関する家庭での工夫は、小学生の宿題が進まないときの家庭支援の記事でも詳しく扱っています。
ゲームや動画をやめられない場面では、終わりを急に伝えるほど強い反発が出やすくなります。楽しい活動の途中で突然止められると、お子さまにとっては気持ちの準備ができないまま切り替えを求められる状態になります。
ABA療育の考え方では、やめられなかった行動だけを見るのではなく、やめる前の合図が分かりやすかったか、終わったあとに何をするか見えていたか、やめられたときに良い経験があったかを見ます。
「あと5分で終わり」「この動画が終わったらおしまい」「終わったらお茶を飲んで宿題の準備をしよう」と、終わりと次の行動を短く伝えると、切り替えの見通しが持ちやすくなります。
ゲームやタブレットとの約束づくりについては、放課後等デイサービスの視点で考えるゲーム・タブレットとの付き合い方の記事も参考になります。
片づけや切り替えの場面で怒ってしまうお子さまは、今していることを終える不安、次の活動への抵抗、片づけ方が分からない負担を抱えていることがあります。
「片づけて」とだけ伝えると、何をどこへ戻せばよいのかが分からず、動き出せないことがあります。その結果、保護者さまの声かけが増え、お子さまはさらに混乱してしまいます。
このようなときは、「ブロックを箱に入れる」「赤い箱に車を戻す」「3つ入れたら終わり」のように、次にする行動を短く示します。できた部分をその場で伝えることで、次の行動へつながりやすくなります。
切り替えが苦手なお子さまには、終わりを先に知らせることも大切です。急に止めるのではなく、あと何分、あと何回、あとどこまでと分かる形にすると、怒り出す前の負担を減らしやすくなります。
注意されたときに泣く、怒る、黙り込む姿は、反省していないのではなく、言われた内容を受け止める前に気持ちがいっぱいになっている場合があります。
長い説明や強い口調が続くと、お子さまは何を直せばよいのか分からなくなります。その場を逃げる、泣く、怒る、黙るという行動で、つらい状況を終わらせようとしていることもあります。
この場面では、まず伝える内容を一つにしぼります。「叩かない」だけで終わるのではなく、「言葉で『やめて』と言おう」「困ったら大人を呼ぼう」と、次に取ってほしい行動を伝えます。
落ち着いたあとに「さっき、途中で止まれたね」「言葉で言えたね」と具体的に伝えると、お子さまは注意された経験だけで終わらず、次に使える行動を学びやすくなります。

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ABA療育を家庭で活かすときは、特別な教材をそろえるよりも、毎日の声かけと環境を少し変えることが大切です。
大人が頑張りすぎる方法は続きません。朝の支度、宿題、片づけ、ゲームの終わりなど、毎日出てくる場面の中で、お子さまが動きやすい形を作っていきます。
お子さまが動けないとき、本人の中では「やらなければいけないこと」は分かっていても、具体的な一歩が分からないまま止まっていることがあります。
そのため、行動の前に「何をすればよいか」を見える形にします。宿題なら、プリントを全部出すのではなく、最初に取り組む1枚だけを置きます。片づけなら、戻す場所を決めて、箱や棚を見れば分かる状態にします。
口頭の説明だけで伝わりにくいお子さまには、メモ、写真、タイマー、チェック欄なども役立ちます。大切なのは、保護者さまが何度も言い続けなくても、お子さまが見て分かる状態にすることです。
ABA療育では、望ましい行動が出た直後の関わりを大切にします。時間がたってからほめるよりも、行動が出たその場で伝える方が、お子さまは何がよかったのかをつかみやすくなります。
「えらいね」だけでは、どの行動がよかったのか分かりにくいことがあります。「ゲームを止めてリモコンを置けたね」「声をかけたら机に来られたね」「怒らずに待てたね」と、見えた行動をそのまま言葉にします。
うまくできた日だけでなく、少しできた日にも伝えます。全部終わらなくても、始められた。最後までできなくても、途中で戻ってこられた。その小さな行動を見つけることが、家庭でABA療育を続ける力になります。
ごほうびと聞くと、おもちゃやお菓子を思い浮かべる方もいますが、家庭で続けるABA療育では、物に限る必要はありません。
お子さまによっては、保護者さまに話を聞いてもらう時間、好きな遊びを数分だけ一緒にすること、得意なことを見てもらうこと、選べることが大きな楽しみになります。
大切なのは、お子さまにとって本当にうれしい経験になっているかどうかです。大人が良いと思うものではなく、その子の表情や行動を見ながら、もう一度やってみようと思える関わりを探します。
「宿題を10分したら休憩」「片づけが終わったら好きな本を読む」「ゲームを約束の時間で終えたら、寝る前に好きな話を聞く」など、行動とその後の楽しみをつなげると、家庭でも続けやすくなります。
同じ行動に対して、家族ごとに言い方が変わると、お子さまは何を求められているのか分かりにくくなります。
例えば、片づけの場面で「片づけて」「もう終わり」「早くして」「何回言わせるの」と言葉が増えるほど、お子さまは行動よりも大人の怒りに反応しやすくなります。
家庭では、よく使う声かけを短く決めておくと負担が減ります。「おもちゃを箱へ」「次は宿題」「あと5分で終わり」「できたら教えて」など、同じ場面で同じ言葉を使うことで、お子さまは次の行動を選びやすくなります。
放課後等デイサービスで使っている声かけがある場合は、家庭でも近い言い方にすると、教室と家庭のつながりが生まれます。家族全員が完全に同じ対応をする必要はありませんが、よく困る場面だけでも言い方を合わせると、生活の中で混乱が起こりにくくなります。
家庭で工夫しても、すぐに行動が変わるとは限りません。特に小学生は、学校で頑張った疲れが帰宅後に出やすく、家庭では感情が崩れやすいことがあります。
そのため、家庭だけで何とかしようとせず、放課後等デイサービスと一緒に関わり方を考えることが大切です。
放課後等デイサービスでは、お子さまが活動に参加しやすい声かけ、気持ちを切り替えやすいタイミング、落ち着きやすい環境を日々見ています。
家庭で困っている場面があるときは、「教室ではどんな声かけで動けていますか」「切り替えの前に何をしていますか」「ほめるときはどんな言葉が入りやすいですか」と聞いてみると、家庭で試せるヒントが見つかります。
お子さまに合う関わりは、一人ひとり違います。一般的な方法をそのまま当てはめるよりも、教室で実際に合っている方法を家庭で使いやすい形に変える方が、続けやすくなります。
家庭で困った行動が続くときは、詳しい日記を書く必要はありません。いつ、どの場面で、何のあとに起きたのかだけでも、支援の手がかりになります。
「宿題を出した直後に怒る」「ゲームを止める声かけで泣く」「夕食前に片づけを求めると動けない」など、場面が分かると、放課後等デイサービスでも支援内容を考えやすくなります。
支援計画では、できない行動だけを見るのではなく、どんな条件ならできるのか、どのような声かけなら受け入れやすいのかも大切にします。家庭での様子を共有することで、教室での支援と家庭での関わりを近づけることができます。
小学生の困った行動は、家庭だけでなく、学校生活や友だち関係ともつながっています。授業中に集中しづらい、休み時間の切り替えが苦手、友だちとのやり取りでトラブルになりやすいなど、学校での負担が家庭での崩れにつながることもあります。
そのため、家庭と放課後等デイサービスだけでなく、必要に応じて学校とも情報を共有することが大切です。
学校ではどの場面で困っているのか、放課後等デイサービスではどんな活動なら参加しやすいのか、家庭ではどの時間帯に崩れやすいのか。それぞれの場面をつなげることで、お子さまへの声かけや支援の方向を合わせやすくなります。
友だち関係や集団場面での行動が気になる場合は、放課後等デイサービスで伸ばすソーシャルスキルの記事も参考になります。ABA療育で行動の前後を見ながら、SSTで人との関わり方を練習していくことで、生活全体の困りごとに対応しやすくなります。
ABA療育を家庭で活かすために大切なのは、困った行動を叱ることではなく、行動の前後を見て、お子さまが動きやすい形を作ることです。
宿題に取りかかれない、ゲームをやめられない、片づけで怒ってしまう、注意されると泣くといった姿には、それぞれ理由があります。行動の前に分かりやすい合図を出し、できた直後に具体的に伝え、その子にとってうれしい経験につなげることで、家庭でも少しずつ行動が変わりやすくなります。
ただし、家庭だけで抱え込む必要はありません。放課後等デイサービスでの様子を共有し、教室でうまくいった声かけや環境づくりを家庭に取り入れることで、お子さまにとって分かりやすい関わりが増えていきます。
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