家庭でできる療育:お風呂・洗髪を嫌がる発達障害の子にできる入浴前5分準備
お風呂の時間になると逃げてしまう、服を脱ぐ前から泣いてしまう、洗髪になると体を反らせて強く嫌がる。発達障害のあるお子さまや発達が気になるお子さまの中には、お風呂や洗髪の時間を強く嫌がる子がいます。
毎日続くことなので、保護者さまにとっては大きな負担になりやすい場面です。「清潔にしてあげたいのに嫌がる」「泣かせてまで洗うしかないのか」と悩みながら、入浴の時間が親子でつらいものになってしまうこともあります。
ただ、お風呂や洗髪を嫌がる行動は、わがままや甘えと決めつけられるものではありません。お湯の温度、シャワーの音、泡の感触、髪を触られる感覚、顔に水がかかる不安、遊びからお風呂への切り替えにくさなど、子どもの中でいくつもの負担が重なっていることがあります。
この記事では、児童発達支援事業所ゆめラボの視点から、お風呂・洗髪を嫌がる発達障害の子どもに見られやすい理由と、家庭でできる入浴前5分の準備についてお伝えします。
INDEX
お風呂や洗髪を嫌がる理由は、一つだけとは限りません。泣く、逃げる、怒る、固まるといった行動の前には、子どもなりの「苦手」「怖い」「まだ心の準備ができていない」というサインが隠れていることがあります。
発達障害のある子どもは、感覚の受け取り方や見通しの持ち方に特性がある場合があります。そのため、大人には短く感じる入浴時間でも、子どもにとっては刺激が多く、予測しにくく、終わりが見えにくい時間になっていることがあります。
お風呂場には、子どもが苦手に感じやすい刺激が多くあります。シャワーが壁や床に当たる音、浴室にこもる声、シャンプーやボディソープのにおい、泡が肌に触れる感覚、お湯の温度などが、一度に重なります。
感覚に過敏さがある子の場合、これらの刺激が強く感じられます。大人が「少しぬるいかな」と感じる温度でも、子どもには熱く感じることがあります。泡が腕についただけで不快に感じたり、浴室の反響音で不安が強くなったりすることもあります。
お風呂を嫌がるときは、「入らないとだめ」と押し切る前に、何に反応しているのかを確認してみます。お湯をかけた瞬間に泣くのか、浴室に入る前から嫌がるのか、シャンプーのにおいで顔をそむけるのかによって、必要な関わり方は変わります。
感覚の苦手さが強いお子さまには、日常の中で少しずつ触れる経験を増やしていくことも一つの方法です。
感覚面への関わり方については、指先の感覚が過敏・鈍い子への療育|ゆめラボ矢野南教室の触覚遊びでも詳しくお伝えしています。
洗髪を嫌がる子の中には、髪を洗われることそのものよりも、顔に水がかかることを強く怖がっている場合があります。目に水が入る、耳に水が入る、息がしにくい、いつ水が流れてくるか分からないといった不安が重なると、洗髪の時間が大きなストレスになります。
特に、過去にシャンプーが目にしみた経験や、急にシャワーをかけられて驚いた経験がある子は、「また同じことが起きるかもしれない」と感じやすくなります。すると、シャンプーを見るだけで逃げる、シャワーの音がしただけで泣くといった反応につながります。
この場合は、洗髪を素早く終わらせることよりも、「顔に水がかからずに終われた」「今日は少しだけ洗えた」という経験を重ねることを先にします。子どもが安心できる姿勢や道具を探しながら、洗髪に対する不安を少しずつ下げていきます。
遊んでいる途中やテレビを見ている途中に、急に「お風呂に入るよ」と言われると、気持ちの切り替えが追いつかない子もいます。発達障害のある子どもは、今していることから次の行動へ移るときに、強い負担を感じることがあります。
お風呂は、服を脱ぐ、浴室に入る、体を洗う、髪を洗う、湯船に入る、体を拭く、服を着るという流れがあります。大人には当たり前の流れでも、子どもにとっては手順が多く、どこで終わるのか分かりにくい時間です。
入浴そのものが苦手というより、「いつ始まるのか」「何をするのか」「いつ終わるのか」が分からないことで、不安や拒否が強くなることもあります。そのため、入浴前の5分で見通しを作ることが、家庭でできる療育として大切になります。

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お風呂が苦手な子に対して、浴室に入ってから声をかけ始めると、すでに気持ちが崩れていることがあります。大切なのは、入浴前の段階で子どもが「これから何をするのか」を分かる状態にしておくことです。
家庭でできる療育は、特別な道具をそろえることだけではありません。声のかけ方、伝える順番、待つ時間、安心できる物の使い方を少し変えるだけでも、お風呂への向かいやすさが変わることがあります。
お風呂に入る前は、長く説明しすぎないことが大切です。「今からお風呂に入って、体を洗って、髪を洗って、温まって、上がったらパジャマを着るよ」と一度に伝えると、言葉の量が多くなり、子どもが何をすればよいか分かりにくくなります。
まずは、「あと5分でお風呂」「おもちゃを置いたらお風呂」「今日は体を洗って、髪は少しだけ」のように、短く区切って伝えます。子どもが見て分かりやすいように、指で数を示したり、絵カードや写真を使ったりする方法もあります。
言葉で伝えるときは、否定や急かしの言葉を減らすことも大切です。「早くして」「泣かないで」ではなく、「あと1回でおしまい」「タオルを持って行こう」「まず脱衣所に行こう」と、次にする行動を伝えます。
子どもへの伝え方を見直したい場合は、子どもが安心する声かけの工夫|児童発達支援事業所ゆめラボの実践もあわせてご覧ください。
お風呂に向かうまでの時間に、子どもが安心できる物を使うことも役立ちます。好きなタオル、湯船で使えるおもちゃ、好きなキャラクターのバスグッズなどがあると、「嫌な時間」だけではなく「少し楽しみがある時間」として受け止めやすくなります。
ただし、おもちゃを使うときは、遊びが終わらなくなるほど数を増やす必要はありません。入浴前5分の準備としては、「このタオルを持って行こう」「今日はこのおもちゃを一つ選ぼう」のように、選択肢を少なくする方が進みやすくなります。
子どもが自分で一つ選ぶ経験は、自分も関わっている感覚にもつながります。大人に連れて行かれるだけではなく、「自分で選んだ物を持ってお風呂へ行く」という流れができると、拒否が少し和らぐことがあります。
お風呂が苦手な子にとって、リビングから浴室へ一気に移動すると負担になることがあります。特に、遊びに集中していた直後や眠気が強い時間帯は、急な移動で気持ちが崩れやすくなります。
その場合は、脱衣所を「お風呂に入る前の準備場所」として使います。脱衣所でタオルを触る、パジャマを確認する、鏡を見ながら顔を拭く、深呼吸をするなど、短い行動を入れることで、次の流れに入りやすくなります。
脱衣所での時間は長くする必要はありません。1分ほどでも、「ここに来たら次はお風呂」という流れが毎日同じになると、子どもは見通しを持ちやすくなります。
入浴前5分は、子どもを説得する時間ではなく、切り替えの助走を作る時間です。お風呂に入る直前の関わり方を毎日できるだけ同じにしていくことで、子どもは「この後はお風呂」と分かりやすくなります。
大切なのは、完璧に入浴できたかどうかではありません。お風呂に向かう前に気持ちを切り替える経験、脱衣所まで行く経験、シャワーの音を聞いても気持ちを立て直せる経験を積み重ねることです。
遊びからお風呂へ移ることが苦手な子には、「いつ終わるのか」を見える形にする方法が合うことがあります。タイマーを使って「鳴ったらおしまい」と伝えたり、絵カードで「遊び」「お風呂」「パジャマ」の順番を見せたりすると、次の行動が分かりやすくなります。
ポイントは、タイマーが鳴った瞬間に無理に連れて行くのではなく、鳴る前から予告することです。「あと5分」「あと1回」「鳴ったらタオルを持つよ」と短く伝えることで、急な中断になりにくくなります。
時間の見通しが持ちにくいお子さまには、生活の中で時間を体感する練習も役立ちます。
家庭での時間感覚の育て方については、発達障害のある子どもが時計を読めない・時間の感覚が身につきにくいときの療育でもお伝えしています。
服を脱ぐ前から不安が強い子には、体を落ち着かせる短い行動を入れると入りやすくなることがあります。たとえば、タオルで手を包む、タオルをぎゅっと握る、肩にタオルをかける、ゆっくり息を吐くといった動きです。
入浴前に体が緊張していると、少しの水や音にも反応しやすくなります。深呼吸やタオル遊びは、お風呂の前に体を少し落ち着かせるきっかけになります。
大人が先に「ふー」と息を吐いて見せると、子どももまねしやすくなります。言葉で「落ち着いて」と言うよりも、大人がゆっくり動いて見せる方が伝わりやすい子もいます。
お風呂や洗髪を嫌がる日でも、毎回すべてを終わらせようとすると、親子で疲れきってしまいます。特に強く嫌がる時期は、「今日は体を洗えたら終わり」「今日は髪をぬらすだけ」「今日は脱衣所まで行けたら終わり」と、達成のラインを先に決めることが大切です。
先に目標を小さくしておくと、保護者さまも声をかけやすくなります。「全部やらないといけない」と思うと、どうしても強い言葉になりやすくなりますが、「今日はここまで」と決めておくと、子どもの小さな行動を認めやすくなります。
清潔を保つことはもちろん大切です。そのうえで、毎日の入浴を苦手な記憶にしないことも同じくらい大切です。できる範囲を決めて、次の日につながる終わり方を目指します。
洗髪は、お風呂の中でも特に嫌がりやすい場面です。髪を触られる、頭を動かされる、顔に水が流れる、シャンプーのにおいが近くなるなど、子どもにとって負担になる刺激が重なります。
洗髪を嫌がる子への関わりでは、「素早く済ませる」だけではうまくいかないことがあります。子どもが何に不安を感じているのかを見ながら、刺激を減らし、予告を入れ、少しずつ慣れる経験を作っていきます。
洗髪で一番嫌がる理由が「顔に水がかかること」の場合は、姿勢を変えるだけで受け入れやすくなることがあります。上を向く姿勢が合う子もいれば、タオルで顔を押さえると安心する子もいます。シャワーハットが合う子もいますが、頭に何かをつける感覚を嫌がる子もいるため、無理に使う必要はありません。
大切なのは、子どもが少しでも安心しやすい姿勢を一緒に探すことです。「上を向いて」だけでは伝わりにくい場合は、大人が手で支える、顔に乾いたタオルを当てる、目を閉じるタイミングを先に伝えるなど、具体的な動きに分けて伝えます。
「今から後ろに流すよ」「3秒だけ流すよ」「顔にはかけないよ」と短く伝えてから水をかけると、子どもは次に起きることを予測しやすくなります。
シャワーの音や水圧が苦手な子には、刺激を弱める工夫が必要です。いきなり頭の近くでシャワーを出すのではなく、少し離れた場所で出してから使う、弱い水圧にする、手おけで少しずつ流すなどの方法があります。
浴室に音が響きやすい場合は、声の大きさにも注意します。子どもが泣いていると、大人も声を大きくしてしまいがちですが、浴室では声が響くため、さらに不安が強くなることがあります。
水圧や音を弱めても嫌がる場合は、洗髪の前に手や腕へ少しだけお湯をかけて、体が水の刺激を受け止める時間を作ります。急に頭へ水がかかるよりも、体の別の部分から始める方が入りやすい子もいます。
洗髪を強く嫌がる時期は、「毎回しっかり洗う」ことにこだわりすぎると、子どもにとって洗髪そのものが怖い記憶として残りやすくなります。特に、泣きながら押さえられた経験が続くと、次の日からさらに拒否が強くなることがあります。
まずは、髪に手を置けた、少しだけぬらせた、泡を一部につけられた、短い時間で流せたといった経験を大切にします。小さな成功を重ねることで、「洗髪は毎回つらいもの」という印象を少しずつ変えていきます。
もちろん、汗や汚れが気になる日はあります。その場合も、子どもの状態を見ながら、短時間で終える、日を分ける、洗う範囲を決めるなど、負担を減らした方法を選びます。
お風呂や洗髪の困りごとは、毎日起こるからこそ、保護者さまの気持ちにも影響します。泣かれるたびに疲れる、兄弟の入浴も進まない、寝る時間が遅くなるなど、家庭全体のリズムにもつながりやすい場面です。
だからこそ、子どもだけを変えようとするのではなく、親子でつらくなりにくい形を作ることが大切です。入浴前の声かけ、目標の決め方、終わり方を少し変えることで、毎日の負担が軽くなることがあります。
お風呂を嫌がる子に対して、「泣かずに入ること」だけを目標にすると、親子で苦しくなります。泣いたかどうかだけで判断すると、脱衣所まで行けたこと、タオルを持てたこと、シャワーの音を聞けたことなど、できた行動が見えにくくなります。
発達障害のある子どもにとって、気持ちが崩れながらも少し行動できたことは大切な一歩です。泣いたとしても、以前より早く落ち着けた、浴室の入口まで行けた、今日は髪を少しだけ触らせてくれたという変化を見ることで、次の関わり方が考えやすくなります。
目標は、「泣かない」ではなく、「次につながる終わり方ができたか」に変えてみます。そう考えると、保護者さまの声かけも穏やかになりやすくなります。
お風呂の時間に少しでもできた行動があれば、短い言葉でその場で伝えます。「すごいね」だけではなく、「タオルを持てたね」「脱衣所まで来られたね」「3秒流せたね」「顔をタオルで押さえられたね」のように、何ができたのかを言葉にします。
発達が気になる子どもは、自分が何を評価されたのか分かりにくいことがあります。行動をそのまま言葉にすると、「これでよかったんだ」と分かりやすくなります。
褒めるタイミングは、すべて終わった後だけでなく、途中にも入れます。お風呂に入る前、脱衣所で待てたとき、シャワーを少し見られたときなど、途中の小さな行動を認めることで、子どもが次の一歩へ進みやすくなります。
お風呂や洗髪で強く泣いているときに、無理に続けるほど苦手さが強くなることがあります。もちろん安全や清潔のために必要な対応はありますが、毎回限界まで頑張らせる必要はありません。
「今日は体だけにする」「髪は明日にする」「シャワーではなく手おけで流す」「短い時間で終わる」など、その日の状態に合わせて終わり方を選ぶことも大切です。
大人が途中で終える判断をすることは、甘やかしではありません。子どもが次の日もお風呂に向かえるように、怖さを残しすぎない関わり方を選ぶことが、家庭でできる療育につながります。
お風呂や洗髪を嫌がる行動には、感覚の過敏さ、水への不安、見通しの持ちにくさ、切り替えの苦手さなど、子どもなりの理由があります。まずは、どの場面で嫌がるのかを見て、入浴前5分の準備から始めてみましょう。
「あと5分でお風呂」と短く伝える、好きなタオルを持って脱衣所へ行く、今日の目標を小さく決める、シャワーの音や水圧を弱める、顔に水がかからない姿勢を探す。こうした関わりは、家庭でできる療育として毎日の生活に取り入れやすい方法です。
それでも、お風呂のたびに強く泣く、洗髪だけ極端に嫌がる、入浴後もしばらく気持ちが戻らない、家庭だけでは対応が難しいと感じる場合は、児童発達支援事業所へ相談することも選択肢の一つです。
ゆめラボでは、発達障害のあるお子さまや発達が気になるお子さまに対して、一人ひとりの特性に合わせた個別療育を行っています。お風呂や洗髪のような家庭での困りごとも、感覚面、切り替え、声かけ、生活動作の視点から一緒に考えることができます。
「お風呂の時間が毎日つらい」「洗髪だけどうしても進まない」「どこまで家庭で対応すればよいか分からない」と感じている保護者さまは、ゆめラボへご相談ください。見学や個別相談では、お子さまの様子をうかがいながら、家庭で取り入れやすい関わり方について具体的にお伝えします。
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