「欲しいものがあると泣いてしまう」「おもちゃを取ってしまう」「大人の手を引っ張って伝えようとする」「まだ『ちょうだい』と言葉で言えない」。そんな姿に、どう声をかければよいのか悩む保護者の方は少なくありません。
子どもにとって「ちょうだい」は、口まねだけで身につく言葉ではありません。自分の欲しい気持ちを相手に向けて伝え、相手から応えてもらうための大事な要求語です。
言葉がまだ出にくい時期には、泣く、取る、手を伸ばす、指さしをする、大人の手を引くといった行動で伝えようとすることがあります。これらの姿を「困った行動」とだけ見るのではなく、その子なりの伝え方として受け止めることが、次の発語ややりとりにつながります。
児童発達支援事業所ゆめラボでも、「ちょうだい」「もう一回」「開けて」などの要求語は、ことばの発達とやりとりの支援で大切にしているテーマです。
このページでは、子どもが「ちょうだい」と言えない背景、要求語につながる前段階のサイン、家庭でできる練習法、クレーン行動や指さしへの関わり方、2歳・3歳で相談したい目安まで、ご家庭で試しやすい形でお伝えします。
INDEX
「ちょうだい」と言えない姿を見ると、言葉の練習が足りないように感じることがあります。けれど実際には、欲しい気持ちはあるのに言葉にする前に気持ちが高ぶってしまう、相手に向けて伝える経験がまだ少ない、場面に合う言葉を思い出せないといった背景があることも多いです。
要求語は、単語をまねする力だけで育つものではありません。欲しいものに気づく、相手を見る、伝えようとする、相手から応えてもらうという経験がつながって、少しずつ使えるようになります。
大切なのは、「言わない子」と決めつけることではなく、今どんな方法で伝えようとしているのかを見ることです。泣く、取る、手を引くといった行動の中にも、要求語につながる手がかりがあります。
小さい子どもは、「欲しい」という気持ちが強くなると、言葉より先に体が動きやすくなります。お菓子に手を伸ばす、おもちゃを取る、大人の手を引っ張る、思い通りにならず泣くといった姿は、わがままではなく、言葉にする力がまだ追いついていない状態です。
特に、欲しいものが目の前にある場面では、考えて言葉にするよりも先に手が出ることがあります。これは「ちょうだい」という気持ちがないのではなく、「欲しい」と思った瞬間に行動で表している形です。
まずは、行動の裏にある気持ちを大人が読み取ることが出発点になります。そのうえで、「欲しいときは相手に向けて伝えると届きやすい」という経験を重ねていくと、泣く・取るだけではない伝え方が育ちやすくなります。
言葉がまだ出にくい時期には、大人の手を持って目的の場所へ連れていくクレーン行動や、欲しいものを指さす姿が見られることがあります。保護者の方の中には、「手を引っ張るばかりで言葉にならない」と心配になる方もいます。
けれど、クレーン行動や指さしは、子どもが相手の力を借りて何かを伝えようとしているサインでもあります。言葉としてはまだ出ていなくても、「あれが欲しい」「開けてほしい」「取ってほしい」という気持ちが行動に表れていることがあります。
大切なのは、クレーン行動をすぐに止めることではありません。子どもが伝えようとした瞬間を使って、「ちょうだいかな」「取ってほしいね」と言葉を添え、より相手に伝わりやすい方法へつなげていくことです。
発達障害や言葉の遅れがあるお子さまの場合、要求したい気持ちはあっても、言葉で伝えるまでに時間がかかることがあります。耳で聞いた言葉をまねしにくい、相手の顔を見ることが少ない、場面に合う言葉を選びにくいといった特性が関係することもあります。
この段階で発語だけを強く求めると、子どもは伝えること自体を負担に感じやすくなります。言葉がまだ出にくいときほど、指さし、身ぶり、写真カード、選択肢など、今使える伝え方を増やすことが大切です。
ことば全体の育ちが気になる場合は、子どもの言葉が遅いと感じたら?家庭でできる5つの関わり方も参考になります。要求語だけでなく、まねっこ、指さし、やりとりの土台もあわせて見ると、今必要な関わりを考えやすくなります。
「ちょうだい」と言えるようになる前には、いくつかの前段階があります。言葉としては出ていなくても、欲しいものを見る、大人の顔を見る、手を伸ばす、声を出すなど、相手に向けた発信が見られることがあります。
この段階を見逃さずに受け止めると、子どもは「伝えたら相手が気づいてくれた」「伝えたら欲しいものが届いた」と感じやすくなります。その経験が、あとから言葉で要求する力につながります。
最初からはっきりした発語だけを目標にすると、子どもの小さなサインを見落としやすくなります。まずは、今出ている伝え方を確認し、そこに言葉を添えることから始めていきます。
要求語につながるサインとして見たいのは、子どもが欲しいものに気づいたあと、大人に向けて何かを発信しているかどうかです。お菓子を見る、おもちゃに手を伸ばす、大人の顔をちらっと見るといった動きは、言葉の前の大事な発信です。
たとえば、子どもが欲しいものを見てから保護者の顔を見たなら、「これ、ほしいね」「ちょうだいだね」と短く受け止めます。まだ言葉で言えなくても、相手を見て伝えようとしたことに意味があります。
このときに、長く説明したり何度も言い直させたりする必要はありません。欲しい気持ちが出ている瞬間に、短い言葉を重ねることで、気持ちとことばがつながりやすくなります。
指さしや身ぶりは、子どもが自分の気持ちを相手に見せるための大切な方法です。欲しいものを指さす、両手を出す、手のひらを上に向ける、うなずくといった姿は、「ちょうだい」に向かう途中のサインとして見ることができます。
このような動きが出たときは、「指さしだけではだめ」と考えるより、「今、伝えようとした」と受け止めたほうが次につながります。大人が「ちょうだいだね」と言葉を添えてから渡すと、指さしから言葉へつなげやすくなります。
何度か同じ流れを経験すると、子どもは「指さしをしたら大人が気づいてくれた」「そのときに『ちょうだい』という言葉を聞いた」と学んでいきます。発語を急がず、伝わる経験を増やすことが近道になる場合があります。
「ちょうだい」とは言えなくても、「あ」「ん」「だ」などの声が出ることがあります。大人から見ると単語になっていないように見えても、欲しいものに向けて声を出しているなら、それは要求語につながる大切な一歩です。
その場で「声で教えてくれたね」「ちょうだいだね」と受け止めると、子どもは声を出すことと相手に伝わることを結びつけやすくなります。発音の正しさよりも、相手に向かって発信したことを大事にします。
1歳・1歳半ごろの言葉の前段階が気になる場合は、1歳児の言葉の発達が気になるときに|ことばが遅いと感じたら見る前段階と相談の目安もあわせて確認してみてください。要求語は、指さし、まねっこ、声を出す力とも深く関係しています。
「ちょうだい」は、家庭の中で練習しやすい要求語です。おやつ、おもちゃ、絵本、シャボン玉、風船など、子どもが欲しいと感じやすいものを使うと、伝えたい気持ちが出やすくなります。
練習といっても、特別な時間を長く作る必要はありません。食事や遊びの中で、子どもが「ほしい」と感じた瞬間を使い、相手に向けて伝える経験を重ねていきます。
大切なのは、言えるまで待たせ続けることではありません。子どもが出しているサインを見て、今できる方法で伝わる経験を作りながら、少しずつ言葉に移していくことです。
最初は、子どもが本当に欲しいと思っているものを使うと進めやすくなります。おやつを少しずつ渡す、シャボン玉を一度吹いて止める、ブロックの一部を大人が持つなど、自然に「もう一回」「ほしい」という気持ちが出る場面を選びます。
反応が薄いものや興味のないものを使うと、子どもにとって要求する意味がわかりにくくなります。まずは、目で追う、近づく、手を伸ばすなど、欲しい気持ちがはっきり出るものから始めます。
子どもが欲しそうにしたら、すぐに渡す前に少しだけ待ちます。その短い間に視線、手の動き、声、指さしが出たら、「ちょうだいだね」と言葉を添えて応えます。
大人が先回りしてすぐに渡してしまうと、子どもは自分から伝える機会を持ちにくくなります。家庭では忙しい場面も多いため、毎回待つ必要はありませんが、練習したい場面では数秒だけ間を作ることが役立ちます。
たとえば、おやつの袋を開ける前に子どもの反応を見る、シャボン玉を吹く前に目が合うのを待つ、絵本をめくる前に手が伸びるかを見るといった形です。長く待たせるのではなく、発信のきっかけを作る感覚です。
待っている間に子どもが不安になったり怒り始めたりする場合は、待つ時間が長すぎることがあります。そのときは、「ちょうだいだね」と大人が先に言葉を添え、すぐに渡して成功で終われるようにします。
要求語は「ちょうだい」だけではありません。遊びや生活の中では、「もう一回」「開けて」「取って」「貸して」なども使いやすい言葉です。子どもの生活で出番が多い言葉から始めると、意味が伝わりやすくなります。
たとえば、シャボン玉なら「もう一回」、お菓子の袋なら「開けて」、高い場所のおもちゃなら「取って」が使いやすい場面です。場面に合った短い言葉をくり返し聞くことで、子どもは少しずつ使いどころをつかんでいきます。
発語がまだ難しい場合は、大人が言葉の見本を見せるだけでも意味があります。「ちょうだい」と言わせることだけを目的にせず、「今の場面ではこの言葉を使う」と体験の中で伝えていきます。
言葉で「ちょうだい」と言えないとき、発語だけを待つと、子どもは泣く、取る、引っ張るといった方法に戻りやすくなります。そんなときは、言葉以外の伝え方も使いながら、要求が相手に届く経験を作ります。
写真カード、指さし、身ぶり、選択肢は、発語を妨げるものではありません。子どもが「伝えられた」と感じる経験を増やし、言葉へ向かう土台を作るための手段です。
児童発達支援の現場でも、言葉だけにこだわらず、その子が使いやすい伝え方を探しながら支援します。家庭でも同じように、今できる方法を使って「伝わった」を増やすことができます。
「言葉で言えるようになってほしい」という思いが強いほど、つい「ちゃんと言って」「何て言うの」と促したくなることがあります。けれど、発語だけを求めすぎると、子どもは伝える前に困ってしまうことがあります。
まず優先したいのは、相手に向けて何かを発信し、それが伝わる経験です。手を伸ばす、指さす、カードを渡す、声を出すなど、今できる方法で伝えられたら、その場で応えます。
伝わった経験が増えると、子どもは「また伝えてみよう」と感じやすくなります。その積み重ねの中で、大人が添える「ちょうだい」「もう一回」「開けて」といった言葉が、子ども自身の言葉として出やすくなります。
言葉で選んだり伝えたりすることが難しい子どもには、写真カードや実物を見せる方法が合うことがあります。おやつ、飲み物、おもちゃ、絵本など、子どもがよく要求するものを写真にしておくと、伝える手がかりになります。
たとえば、飲み物を選ぶときに「お茶」と「牛乳」の写真を見せ、子どもが見たもの、触ったもの、指さしたものを受け取ります。そのうえで「お茶ちょうだいだね」と大人が言葉を添えます。
選択肢が多すぎると迷いやすくなるため、最初は二つから始めると使いやすくなります。子どもが選んだ直後に応えることで、「見せる」「指さす」「選ぶ」ことが要求として伝わる経験になります。
クレーン行動があると、「言葉で言ってほしい」と感じる保護者の方は多いです。ただ、大人の手を引く行動を強く止めるだけでは、子どもは次にどう伝えればよいのかわからなくなってしまいます。
大人の手を引いたときは、まず「取ってほしいんだね」「開けてほしいね」と気持ちを言葉にします。そのあと、指さしを促したり、カードを見せたり、「ちょうだい」と大人が短く言葉の見本を示したりして、次の伝え方へつなげます。
やりとり全体の力を家庭で育てたい場合は、家庭でできるSSTの工夫を紹介した記事も参考になります。「ちょうだい」や「貸して」は、順番、待つ、相手を見るといった社会性の力とも関係しています。
「ちょうだい」を練習しているのに、泣くことが増えた、怒るようになった、伝える前にあきらめるようになったという場合は、練習の進め方が今の子どもに合っていない可能性があります。
要求語の練習は、たくさん言わせることが目的ではありません。子どもが「伝えたら届いた」と感じられる場面を作ることが大切です。
家庭では、次の関わりを見直すことで、子どもが伝えようとする姿が出やすくなることがあります。
「ちょうだい」と言えるまで渡さない対応は、子どもによっては大きな負担になります。特に、欲しい気持ちが強い場面では、言葉を出すより先に気持ちが高まり、泣く、怒る、取ろうとする姿につながりやすくなります。
もちろん、言葉を引き出したい気持ちは自然なものです。ただ、毎回泣いて終わる、怒って終わる、あきらめてしまうという流れが続くなら、求める段階を下げる必要があります。
声が出なくても、手を伸ばした、指をさした、大人を見たという発信があれば、まずは成功として受け止めます。そのうえで「ちょうだいだね」と言葉を添えるほうが、次の発信につながりやすくなります。
「言ってごらん」「何て言うの」「ほら、ちょうだいは?」と何度も促されると、子どもは何をすればよいのかよりも、言わなければいけない緊張のほうが強くなることがあります。
促しは短く、一度で十分です。子どもが欲しそうにしたら、「ちょうだいだね」と見本を出し、まねできそうなら少し待ちます。難しければ、大人が言葉を添えたうえで渡してかまいません。
発語を待つ時間は、子どもが落ち着いていられる範囲にします。言えなかったことを責めず、伝えようとした動きを受け取ることで、「また言ってみよう」という気持ちが残りやすくなります。
家庭では、子どもが泣く前に渡したり、困る前に大人が動いたりする場面が多くなります。毎日の生活を進めるためには必要なこともありますが、先回りが続くと、子どもが自分から要求する機会が少なくなります。
練習したい場面だけでも、すぐに渡す前に数秒待ってみます。お菓子を見せて反応を見る、絵本を途中で止めて次を待つ、シャボン玉を一度止めて子どもの発信を待つなど、生活や遊びの中で短い間を作ります。
待つ時間は長くなくてかまいません。子どもが不安になる前に、「もう一回だね」「ちょうだいだね」と支えながら応えることで、無理なく伝える経験を増やせます。
2歳・3歳は、言葉の育ちに個人差が大きい時期です。「ちょうだい」がまだはっきり言えないことだけで、すぐに問題と決める必要はありません。
一方で、欲しいものがあるたびに泣く、取る、怒る姿が多い場合や、指さし、まねっこ、呼びかけへの反応なども気になる場合は、早めに相談することで関わり方を見つけやすくなります。
相談は、診断を受けるためだけのものではありません。今の発達段階に合った伝え方を知り、家庭や園での困りごとを減らすためにも役立ちます。
欲しいものがあると毎回泣く、怒る、取る、投げるといった姿が続く場合、子どもは要求したい気持ちをうまく相手に届けられていない可能性があります。本人も伝わらないことに困っています。
この状態が続くと、家庭でのやりとりが大変になるだけでなく、園や外出先でもトラブルになりやすくなります。早めに伝え方の選択肢を増やすことで、泣く・取る以外の方法を経験しやすくなります。
「言葉で言えないから仕方ない」と見守るだけでなく、今使えるサインやカード、短い言葉を組み合わせて、伝わる方法を作っていくことが大切です。
「ちょうだい」が出ないことに加えて、指さしが少ない、まねっこが少ない、名前を呼んでも振り向きにくい、大人の顔を見ることが少ないといった姿がある場合は、ことばだけでなくコミュニケーション全体を見ていく必要があります。
要求語は、単語を覚える力だけでなく、相手に気づく力、まねる力、視線を合わせる力、やりとりを楽しむ力ともつながっています。そのため、発語の数だけで判断せず、言葉の前の段階も確認します。
家庭で判断に迷うときは、児童発達支援事業所や自治体の相談窓口、園の先生などに様子を伝えてみることが役立ちます。早い段階で今の状態を確認できると、家庭での声かけや遊び方も変えやすくなります。
家庭では大人が気持ちを読み取れていても、園では先生や友だちに伝わりにくいことがあります。欲しいものを取ってしまう、順番を待てない、困ったときに泣いてしまうなど、集団生活の中で困りごとが見えやすくなる場合もあります。
園での様子を聞いたときは、家庭と違うからとそのままにせず、「どんな場面で伝えにくいのか」「何を欲しがったときに困るのか」「大人がどう関わると落ち着くのか」を確認します。場面がわかると、家庭でも近い練習を取り入れやすくなります。
なお、「手伝って」と言えず困っても助けを求められない姿が中心の場合は、発達障害の子どもが「手伝って」と言えない理由は?自立につながる助けの求め方で詳しく紹介しています。このページでは「ちょうだい」などの要求語を中心に、欲しい気持ちを伝える力を見ていきます。
「ちょうだい」は、子どもが自分の欲しい気持ちを相手に届けるための大切な要求語です。言葉としてはまだ出ていなくても、手を伸ばす、指さす、大人の顔を見る、声を出す、クレーン行動で伝えようとするなど、発語につながるサインが見られることがあります。
家庭での練習では、最初からきれいな言葉を求めすぎず、子どもが今できる方法で伝わる経験を増やすことが大切です。おやつや好きなおもちゃ、シャボン玉、絵本など、要求が出やすい場面を使い、「ちょうだい」「もう一回」「開けて」といった短い言葉を添えていきます。
言葉で言えないときは、指さし、ジェスチャー、写真カード、選択肢を使ってもかまいません。大切なのは、「自分から伝えたら相手に届いた」という実感を積み重ねることです。
児童発達支援事業所ゆめラボでは、要求語が出にくい背景や、泣く・取る・クレーン行動で伝える姿もふまえながら、お子さまに合った伝え方を一緒に考えています。
「ちょうだい」が言えないことが気になるとき、家庭での関わり方に迷うとき、園でも伝え方に困っていると感じるときは、ひとりで抱え込まずにご相談ください。
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