発達が気になるお子さまとスーパーへ行くと、「店内を走ってしまう」「商品を次々に触る」「レジの列で泣く」「カートから降りたがる」といった場面に困ることがあります。
買い物は日常生活に欠かせない外出ですが、スーパーは子どもにとって刺激が多い場所です。お菓子、飲み物、キャラクターの商品、人の声、レジの音、カートの動き、店内放送などが一度に入ってくるため、発達が気になる子どもは落ち着いて動きにくくなることがあります。
保護者の方は「危ないから止まってほしい」「商品を触らないでほしい」と思っていても、子どもには何をすればよいのかが伝わりにくいことがあります。そのため、買い物中に注意を重ねるよりも、家を出る前に買い物の流れを見せ、スーパーでどう動くかを短く練習しておくことが大切です。
このページでは、児童発達支援事業所ゆめラボの視点から、発達が気になる子の買い物対策として、スーパーで走る、商品を触る、レジ待ちで泣く・座り込むといった行動の背景と、家庭でできる予告練習を解説します。
INDEX
スーパーで走る、商品を触るという行動は、保護者の方から見ると「言うことを聞かない」「わざと困らせている」と感じやすい場面です。しかし、発達障害やグレーゾーンのお子さまの場合、行動の裏側には刺激の受け取り方、見通しの持ちにくさ、衝動の止めにくさが関係していることがあります。
買い物中の行動を変えるためには、まずどの場面で起きやすいのかを確かめます。同じように店内を走っていても、好きな商品を見つけて体が先に動いている子もいれば、人混みや音がつらくてその場から離れようとしている子もいます。
スーパーには、子どもの注意を引くものがたくさんあります。色の強いパッケージ、好きなお菓子、冷蔵ケースの明かり、レジの音、ほかのお客さんの動きなどが同時に目や耳に入ります。
発達が気になる子どもは、目に入る情報から必要なものだけを選びにくい場合があります。保護者の方が「牛乳を買ってレジへ行く」と考えていても、子どもの目には、気になる商品や動きが次々と飛び込んできます。その結果、売り場へ走る、商品に手を伸ばす、カートから降りようとする行動につながります。
また、人混みや店内放送が苦手な子は、スーパーに入った時点で緊張が高まっていることがあります。表情が硬くなる、耳をふさぐ、足踏みが増える、急に早歩きになるといった姿が見られる場合は、まず刺激の強さを見ます。
大人にとってスーパーは、必要な物を買う場所です。しかし子どもにとっては、どの売り場へ行くのか、何個買うのか、どれくらいで終わるのかが見えにくい場所でもあります。
終わりが見えないまま店内を歩くと、子どもは不安になったり、退屈になったりします。「あと少し」と言われても、その少しがどのくらいなのか分からないため、レジ待ちの途中で泣く、床に座り込む、走って離れるといった行動が出やすくなります。
発達が気になる子どもには、「買い物に行くよ」だけでは情報が足りないことがあります。「今日はパンと牛乳を買ったら終わり」「レジが終わったら車に戻る」と、買う物と終わりを短く伝えると、買い物の流れを受け入れやすくなります。
目の前に好きなお菓子やキャラクターの商品があると、子どもは「見たい」「持ちたい」「近くに行きたい」と感じます。発達が気になる子どもの中には、その気持ちが出た瞬間に体が動き、手が伸びる子もいます。
このとき、「触らないで」と言われても、子どもには代わりに何をすればよいのかが分からないことがあります。手をどこに置くのか、どこを歩くのか、どのタイミングで止まるのかが見えていないと、注意された直後に同じ行動を繰り返してしまいます。
そのため、買い物前の予告では、「触らない」よりも「手はカート」「見るだけ」「ママの横を歩く」など、してほしい行動を短い言葉で伝えることが大切です。
スーパーでの困りごとは、店に入った瞬間から起きるとは限りません。入口では落ち着いていても、お菓子売り場に近づくと走る、レジに並ぶと泣く、買い物が長くなると商品を触り始めるなど、困った行動が起こりやすい場面にはきっかけがあります。
まずは、どの場面で困りごとが出るのかを見ていくと、買い物前に準備する内容が決めやすくなります。外出先で待てない、急に走り出す行動がある場合は、関連する内容として発達が気になる未就学児が外出先で待てない・走り出すときの家庭での関わり方も参考になります。
店内を走る行動は、スーパーで特に心配が大きい困りごとです。通路の角から急に飛び出す、駐車場に向かって走る、保護者の手を振りほどくといった姿があると、事故につながる不安があります。走る行動が出る子どもには、「走らないで」と何度も言うより、「カートの横を歩く」「曲がり角では止まる」「入口では手をつなぐ」など、場所に合わせた動きを伝えるほうが行動につながりやすくなります。
また、買い物の時間が長くなるほど体を動かしたい気持ちが強くなる子もいます。最初から大人の買い物量に合わせるのではなく、短い買い物で終われる日を作ることが、スーパーで歩く練習になります。
商品を触る行動には、興味、確認、感触を確かめたい気持ち、買いたい気持ちが関係していることがあります。特にお菓子や飲み物の売り場では、子どもが手を伸ばしやすくなります。保護者の方は「触らないで」と止めたくなりますが、手が空いている状態では、気になる物に手が伸びやすくなります。買い物中は、子どもの手の置き場所を先に決めておくことが大切です。
たとえば、「この売り場では手はカート」「見るだけ」「買う物はママに渡す」と伝えます。子どもが持ってよい物を一つ決めておくと、ほかの商品へ手が伸びにくくなる場合もあります。
レジ待ちは、発達が気になる子どもにとって難しい場面です。立って待つ、順番を待つ、好きな物を買えないまま通り過ぎる、店員さんとのやりとりを待つなど、短い時間の中に複数の負担があります。泣く、怒る、座り込むといった行動が出ると、保護者の方は周囲の目も気になり、焦りやすくなります。その場で長く説明しても、子どもの気持ちが高ぶっているときは言葉が届きにくいことがあります。
レジで崩れやすい子には、買い物前に「レジでは前の人が終わるまで待つ」「終わったらシールを見る」「車に戻ったらお茶を飲む」など、待った後に何があるかを伝えておくと、待つ理由を受け入れやすくなります。
スーパーでの行動は、スーパーに着いてから急に変えようとしても難しいことがあります。店に入る前から子どもの気持ちが高ぶっている場合、注意や説明が届きにくくなるためです。
家庭でできる買い物対策の中心は、予告練習です。予告練習とは、買い物へ行く前に、これから何をするのか、どこで何を守るのか、いつ終わるのかを子どもに伝え、短く確認してから出かける関わりです。
買い物前に、買う物を全部伝える必要はありません。子どもが分かりやすい物を二つか三つに絞り、「今日はパンと牛乳を買うよ」「お菓子は今日は買わないよ」「レジが終わったら帰るよ」と短く伝えます。
買う物が多い日ほど、子どもにとっては終わりが見えにくくなります。発達が気になる子どもと買い物練習をする日は、短い買い物から始めるほうが成功しやすくなります。
「全部の買い物に付き合う練習」ではなく、「パンを買ってレジまで行く練習」と考えると、保護者の方も子どもも負担が軽くなります。
言葉だけの説明では伝わりにくい子には、写真や絵を使うと理解しやすくなります。スーパーの入口、買う物、レジ、車や家の写真を見せながら、「入口、パン、レジ、帰る」と順番を確認します。
手描きの簡単な絵でもかまいません。大切なのは、子どもが「今から何をするのか」「どこまで行けば終わるのか」を目で確認できることです。
写真や絵を使った見通しは、買い物だけでなく、着替え、片付け、寝る前の流れなどにも使えます。
切り替えの支援を家庭で取り入れたい場合は、切り替えが苦手な子どもへの支援アイデア5選もあわせて読むと、日常生活に広げやすくなります。
買い物前の約束は、一度に多くしすぎないことが大切です。「走らない」「触らない」「泣かない」「勝手に行かない」といくつも伝えると、子どもは何を一番守ればよいのか分かりにくくなります。
最初は一つだけにします。走り出しが心配な子なら「カートの横を歩く」、商品を触る子なら「手はカート」、レジ待ちが苦手な子なら「レジでは足は床」といったように、動きが見える言葉に変えます。
「ちゃんとして」では、子どもは具体的な行動を思い浮かべにくいことがあります。「歩く」「止まる」「見るだけ」「手はカート」と短く伝えることで、スーパーで思い出しやすくなります。
買い物中は、保護者の方も商品を選び、会計をし、荷物を持つため、子どもだけに集中し続けることは難しくなります。だからこそ、子どもが何をすればよいのか分かる状態を作っておくことが大切です。
スーパーでの買い物対策は、子どもを黙って待たせることだけではありません。役割を渡す、買い物量を減らす、触りそうな場面で先に行動を伝えることで、行動が乱れる前に動き方を示しやすくなります。
子どもは、何をすればよいのか分からない時間が長くなると、走る、触る、別の売り場へ行くといった行動に向かいやすくなります。買い物中に小さな役割を渡すと、何をして待てばよいかが分かります。
たとえば、「このパンをかごに入れてね」「牛乳を見つけたら教えてね」「レジまでカードを持っていてね」と伝えます。重い物や割れやすい物ではなく、子どもが扱いやすい物を選ぶことが大切です。
役割は、子どもを手伝わせるためだけではありません。「自分も買い物に参加している」と感じることで、保護者のそばを歩きやすくなります。
家庭での役割づくりを広げたい場合は、発達障害のある子どもに向いているお手伝いとは?家庭で成功体験を増やす療育の工夫も参考になります。
発達が気になる子どもとスーパーへ行くとき、毎回たくさんの買い物をこなそうとすると、子どもにとっても保護者の方にとっても負担が大きくなります。
買い物練習を目的にする日は、買う物を少なくします。「今日は三つ買ったら終わり」「今日はレジまで歩けたら成功」と決めておくと、子どもが最後まで取り組みやすくなります。
短時間の買い物でうまくいった経験が増えると、子どもは「スーパーに行っても大丈夫」「終わりまでできた」と感じやすくなります。最初から長時間の買い物に慣れさせるより、小さく成功できる場面を重ねるほうが次につながります。
商品を触ってから注意するより、触りそうな売り場に入る前に手の置き場所を伝えます。お菓子売り場に入る前に「ここからは手はカート」、パン売り場の前で「見るだけ」、レジ前で「カードを持つ」と声をかけます。
このとき、強い口調で止める必要はありません。短く、同じ言葉で伝えることが大切です。子どもが手をカートに置けたら、「手を置けたね」「見るだけできたね」と、できた行動を言葉で返します。
買い物中に使う言葉は、家庭でも同じ言葉を使うと伝わりやすくなります。家でおやつを選ぶときにも「見るだけ」「一つ選ぶ」「手は机」と同じ言葉を使うと、スーパーで思い出しやすくなります。
家庭でのやりとり練習を深めたい場合は、家庭でできるソーシャルスキルトレーニング(SST)も参考になります。
買い物から帰った後は、保護者の方も疲れているため、つい「また走ったね」「商品を触ったらだめでしょ」と言いたくなることがあります。しかし、買い物後の関わり方によって、次の買い物への受け止め方が変わります。
発達が気になる子どもは、失敗だけを強く伝えられると、スーパーそのものを嫌な場所として覚えてしまうことがあります。できなかったことを確認する前に、できた場面を言葉にすることが大切です。
買い物中に走った場面があっても、最初から最後までずっと走っていたとは限りません。入口で手をつなげた、パン売り場までは歩けた、レジで少し待てたなど、できた場面がどこかにあるはずです。
帰宅後は、「入口で手をつなげたね」「パンをかごに入れられたね」「レジまで行けたね」と、できた行動を先に伝えます。子どもが自分の成功を思い出せると、次の買い物でも同じ行動を出しやすくなります。
注意したいことがある場合も、長く話す必要はありません。「次はお菓子売り場では手はカートにしよう」と一つだけ伝えるほうが、子どもが覚えやすくなります。
買い物で困ることが多いと、保護者の方は「次は走らないで、商品を触らないで、泣かないで、レジで待って」とまとめて伝えたくなります。しかし、約束が多いほど子どもは思い出しにくくなります。
次の買い物で守る約束は、一つに絞ります。安全面で心配が大きい場合は「駐車場では手をつなぐ」、商品への手出しが多い場合は「お菓子売り場では手はカート」、レジ待ちが苦手な場合は「レジでは足は床」と決めます。
一つの約束が守れたら、次の買い物で少し広げます。買い物対策は、一度で完成させるものではなく、子どもが覚えやすい行動を少しずつ増やしていく関わりです。
買い物中に泣いたり、走ったり、商品を触ったりした日は、保護者の方も気持ちが沈みやすくなります。その日にすべてを直そうとすると、親子ともに疲れきってしまいます。
うまくいかなかった日は、買い物の長さ、時間帯、混み具合、子どもの体調を見直します。眠い時間だった、空腹だった、人が多かった、買う物が多かったなど、行動が出やすい条件が重なっていることがあります。
次は、空いている時間に行く、買う物を一つにする、入口に近い売り場だけで終える、レジ待ちが短い店を選ぶなど、成功しやすい形に変えます。買い物の失敗を責めるのではなく、次に成功しやすい条件へ変えることが大切です。
スーパーでの困りごとは、保護者の方にとって大きな負担になります。周囲の目がある中で子どもが走る、泣く、商品を触ると、焦りや怒りが出るのは自然なことです。
ただ、買い物中の関わり方によっては、子どもの不安や興奮が強まり、次の買い物でも同じ行動が出やすくなる場合があります。家庭でできる対策とあわせて、避けたい関わり方も知っておくことが大切です。
店内で子どもが走ったり、商品を触ったりしたとき、危険がある場面ではすぐに止める必要があります。ただし、安全を確保した後に、その場で長く叱り続けると、子どもは何を直せばよいのか分からなくなることがあります。
気持ちが高ぶっているときは、説明を聞く力も落ちやすくなります。長い説教よりも、「止まる」「手はカート」「ここで待つ」と短く伝え、できた瞬間に行動を返すほうが次につながります。
叱る時間が長くなるほど、保護者の方も疲れます。買い物中は長く話す場ではなく、短い言葉で行動を戻す場と考えると、親子の負担を減らしやすくなります。
「ちゃんとして」「いい子にして」「触らないで」という言葉は、大人にとっては分かりやすく感じます。しかし、発達が気になる子どもには、具体的な動きとして伝わりにくいことがあります。
子どもが知りたいのは、「では、何をすればよいのか」です。触ってほしくないなら「手はカート」、走ってほしくないなら「歩く」、離れてほしくないなら「ママの横」と伝えます。
してほしくない行動だけを止めるのではなく、してほしい行動を言葉にすることで、子どもは動き方を思い出しやすくなります。
発達が気になる子どもの状態は、日によって変わります。よく眠れた日と眠れていない日、園で疲れている日、空腹の日、人が多い時間帯では、同じスーパーでも過ごしやすさが変わります。
前回できたからといって、毎回同じ買い物量を求めると、子どもにとって負担が大きくなる場合があります。今日は短く終える、今日は入口近くの商品だけ買う、今日は一緒に入らず家族に頼むなど、日によって方法を変える選択肢もあります。
買い物対策は、子どもを大人の予定に合わせ続けることではありません。安全を守りながら、子どもが少しずつスーパーでの動きを覚えていける形を作ることが大切です。
発達が気になる子どもがスーパーで走る、商品を触る、レジ待ちで泣くといった行動には、刺激の多さ、見通しの持ちにくさ、触りたい気持ちや動きたい気持ちの止めにくさが関係していることがあります。
買い物中に注意を重ねるだけでは、子どもは何をすればよいのか分からないままになりやすいです。家を出る前に「何を買うか」「どこで終わるか」「手はどこに置くか」を短く伝え、写真や絵で流れを見せ、買い物中には小さな役割を渡すことで、スーパーでの行動が変わるきっかけになります。
大切なのは、長い買い物を我慢させることではなく、短い買い物で「歩けた」「見るだけできた」「レジまで行けた」という経験を増やすことです。できた行動を帰宅後に伝え、次の約束を一つに絞ることで、子どもは買い物の流れを覚えやすくなります。
家庭で予告練習をしても、スーパーでの飛び出し、商品への手出し、強い泣きや座り込みが続く場合は、児童発達支援事業所へ相談することもできます。ゆめラボでは、発達が気になるお子さまの生活場面に合わせて、家庭で使いやすい声かけや見通しの作り方を一緒に考えています。
買い物、外出、待ち時間、切り替えなど、日常生活の中で気になる姿がある場合は、無理に家庭だけで抱え込まず、お近くのゆめラボへご相談ください。
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