「名前を呼んでもこちらを見てくれない」「おもちゃで遊んでいるときに目線が合いにくい」「大人が見せたものに気づきにくい」など、発達障害の特性があるお子さまとの関わりで、不安やさみしさを感じる保護者の方は少なくありません。
こうした様子には、「共同注意」と呼ばれる力が関わっていることがあります。
共同注意とは、子どもと大人が同じものを見たり、同じ出来事に気づいたりしながら、気持ちを共有していく力です。ことばの発達や人とのやりとりにつながる土台であり、療育でも大切にしたい力のひとつです。
このページでは、児童発達支援事業所ゆめラボが日々の支援で大切にしている考え方をもとに、発達障害のあるお子さまの共同注意を育てる関わり方を紹介します。
指差し、視線、まねっこ遊びなど、家庭でも取り入れやすい療育遊びを通して、「一緒に見る」「伝わったと感じる」「人とのやりとりを楽しむ」経験を、日常の中でどう増やしていけるのかを見ていきます。
INDEX
共同注意とは、大人と子どもが「同じものに一緒に注意を向けること」です。
例えば、窓の外に消防車が通ったとき、大人が「見て、消防車だよ」と指差しをし、子どもも同じ方向を見る。あるいは、子どもが好きなおもちゃを持ってきて、大人の顔を見ながら「見て!」と伝えようとする。
こうした短いやりとりが、共同注意の入り口になります。
共同注意は、ただ目を合わせることだけを指すわけではありません。大人の顔を見る、指差しの先を見る、同じおもちゃを見て笑う、驚いた表情を共有するなど、さまざまな形があります。
発達障害のあるお子さまの中には、人よりも物に注意が向きやすかったり、自分の興味のある遊びに深く入り込みやすかったりする子もいます。そのため、周囲の人が「見て」と声をかけても反応が薄く見えることがあります。
ただし、それは人に関心がないという意味ではありません。
子どもが見ているものや楽しんでいる遊びに大人が近づくことで、共同注意のきっかけは少しずつ増えていきます。
多くの子どもは、成長の中で少しずつ「指差し」や「見て!」といった行動を覚えていきます。
最初は、ほしいものに手を伸ばすところから始まります。やがて、大人の手を引いて連れていく、ほしいものの近くまで行く、指先で示す、顔を見ながら声を出すなど、伝え方が少しずつ変わっていきます。
このとき育っているのは、物を取ってもらう力だけではありません。
「相手に気づいてほしい」「自分の見ているものを共有したい」「伝えたら反応してもらえた」という経験が積み重なることで、人とのやりとりの土台が育っていきます。
発達障害の特性があるお子さまでは、指差しや「見て!」がゆっくり育つことがあります。
興味の対象が限られていたり、人とかかわるよりも物そのものに集中しやすかったりすると、大人の顔を見る、相手に見せる、気持ちを共有するという流れに移りにくいことがあります。
そのようなときは、指差しを出させようと急ぐよりも、子どもが心から好きなものを一緒に楽しむことから始めます。
車が好きな子なら車のおもちゃを一緒に走らせる。絵本の動物が好きな子なら、同じページを見ながら声を添える。音の出るおもちゃが好きな子なら、音が鳴った瞬間に大人も同じ表情で反応する。
こうした小さなやりとりが、「人と一緒に見ると楽しい」という感覚につながっていきます。
ことばが出る前の関わりをより広く知りたい場合は、言葉の前に育てたい模倣・共同注意・指差し要求の考え方もあわせてご覧ください。
「目が合いにくい」「名前を呼んでも振り向きにくい」という様子があると、保護者の方はとても心配になると思います。
ただ、共同注意を考えるときは、目が合うかどうかだけで判断しないことが大切です。子どもによっては、目を合わせることが負担になりやすい場合があります。視線を合わせていなくても、声の方向に少し体を向けている、手元の動きが止まる、大人の動きに合わせておもちゃを動かすなど、反応が別の形で出ていることもあります。
確認したいのは、「大人の存在にまったく気づいていないのか」「気づいているけれど、反応の仕方がまだ出にくいのか」「好きな遊びに集中していて切り替わりにくいのか」という違いです。
たとえば、名前を呼んでも振り向かない子でも、好きな歌が聞こえると表情が変わることがあります。大人の顔は見ていなくても、大人が止まると遊びの続きを求めるように手を伸ばすこともあります。
こうした反応は、共同注意を育てる手がかりになります。
「こっちを見て」と何度も求めるより、子どもが見ているものに大人が入っていく方が、やりとりは生まれやすくなります。子どもの視線の先にあるものを見て、「それ、気になるね」「もう一回やってみようか」と声を添えることで、同じものを共有する時間が少しずつ増えていきます。
共同注意を育てたいからといって、「こっちを見て」「ちゃんと目を合わせて」と何度も声をかけすぎると、子どもにとっては負担になることがあります。
特に発達障害のあるお子さまの中には、人と目を合わせること自体が疲れやすい子や、感覚の過敏さから視線を受け止めにくい子もいます。
大切なのは、共同注意を「訓練」として押しつけるのではなく、楽しい遊びの中に自然に入れていくことです。
子どもが夢中になれるおもちゃや遊びの中で、大人の顔をちらっと見る、同じものに反応する、といった場面を増やすと、無理なく共同注意を経験できます。
例えば、大人が少し大きめの表情で驚いてみせる。子どもがこちらをちらっと見た瞬間に、笑顔で返す。おもちゃが動いた瞬間に「わあ、動いたね」と同じ出来事に反応する。
そうしたやりとりの中で、子どもは「見たら反応が返ってきた」「同じものを見たら楽しかった」という経験を重ねていきます。
共同注意の育ち方には個人差があります。
そのため、指差しが少ない、目が合いにくい、まねっこに入りにくいといった様子があるからといって、すぐに何かを決めつける必要はありません。
一方で、日常の中で同じような困りごとが続いている場合は、子どもがどの場面で反応しやすいのか、どの場面でやりとりが途切れやすいのかを確認すると、関わり方を考えやすくなります。
共同注意は、ことば、遊び、人との関わりに広くつながる力です。小さなサインを受け止めながら関わることで、親子のやりとりは少しずつ変わっていきます。
共同注意が育ちにくいお子さまでは、指差しが少なかったり、ほしいものをうまく伝えられなかったりすることがあります。
たとえば、欲しいものがあると泣く、棚の前で立ち止まる、大人の手を引いて連れていく、物を取れずに怒るといった姿です。
このような場面では、「なぜ言えないの?」と考えるより、「どのように伝えようとしているのか」を見ていくことが大切です。
ことばや指差しが出ていなくても、視線、手の動き、体の向き、声の出し方に、子どもなりのサインが出ていることがあります。
大人がそのサインを受け止めて、「これが欲しかったんだね」「こっちを選んだんだね」と言葉にすることで、子どもは「伝わった」という経験を積み重ねることができます。
指差しは、指の形だけを教えるものではありません。伝えたい気持ちがあり、それを受け止めてもらえる経験があって、少しずつ育っていくものです。
発達障害のあるお子さまの中には、好きな物や決まった遊びに強く集中する子がいます。
車のタイヤをじっと見続ける、同じ音を何度も鳴らす、ブロックを並べることに夢中になるなど、大人から見ると「ひとりの世界に入っているように見える」こともあります。
その集中そのものは、子どもにとって安心できる時間であり、得意な見方でもあります。
無理に遊びを止めたり、別のものへ切り替えたりすると、かえって不安や怒りにつながることがあります。
共同注意を育てるときは、子どもの好きな物を入口にします。
車を並べているなら、大人も隣で同じように一台走らせてみる。音を楽しんでいるなら、大人も同じ音に反応してみる。ブロックを積んでいるなら、「高くなったね」と子どもが見ているものに声を添える。
子どもが見ている遊びに大人が加わることで、「同じものを見ている」「同じ遊びを楽しんでいる」という時間が生まれます。
その積み重ねが、大人の表情に気づく、声に反応する、次の動きを待つといった姿につながります。
共同注意は、まねっこやごっこ遊びとも深く関わっています。
大人の動きを見る、同じようにやってみる、ぬいぐるみにごはんをあげるふりをするなどの遊びには、「相手のしていることに気づく」「同じ場面を共有する」という力が含まれています。
発達障害のあるお子さまの中には、まねっこに興味を示しにくい子や、ごっこ遊びの意味がつかみにくい子もいます。
その場合、いきなり複雑なごっこ遊びに誘うより、生活に近い短いやりとりから始めると入りやすくなります。
手を叩く、バイバイをする、ボールを転がす、ぬいぐるみにタオルをかけるなど、動きがわかりやすく、終わりが見えやすい遊びから始めてみましょう。
子どもが少しでも似た動きをしたら、「同じだね」「まねできたね」と反応を返します。うまくできたかどうかよりも、大人と同じ場面に参加できたことを大切にすると、共同注意の経験につながりやすくなります。
自閉症のあるお子さまのことば以前のやりとりについては、自閉症の子どものコミュニケーションを育てる家庭での関わり方でも紹介しています。
療育の場で行う支援に加えて、家庭で無理なく続けられる遊びがあると、共同注意は育ちやすくなります。
特別な教材を用意しなくても、家にあるおもちゃ、絵本、乗り物、シャボン玉、ぬいぐるみなどを使って取り組むことができます。
大切なのは、「できたかどうか」だけを見るのではなく、「同じものを見られたか」「同じ場面で笑えたか」「子どもが伝えようとした瞬間を受け止められたか」に目を向けることです。
発達障害の特性があるお子さまは、最初は反応が薄かったり、大人の思った通りに遊ばなかったりするかもしれません。それでも、子どもの表情や視線、手の動きには、関わりのきっかけが隠れていることがあります。
ここでは、家庭でも取り入れやすい共同注意の療育遊びを紹介します。
指差しを直接教え込むのではなく、「ここかな?」「あっちかな?」と一緒に探す遊びにすると、自然に視線や手が動きやすくなります。
例えば、子どもの好きなおもちゃをカップや箱の下に隠し、「どっちに入っているかな?」と声をかけます。大人がゆっくりカップを指で示しながら待つと、子どもが見る、手を伸ばす、近づくなどの反応を返しやすくなります。
初めのうちは、指差しが出なくても問題ありません。
視線が動いたら、「こっちを見たね」と受け止める。カップに触れたら、「こっちを選んだんだね」と言葉にする。手を伸ばしたら、「これが欲しかったんだね」と返す。
こうしたやりとりを重ねることで、子どもは「見たら伝わる」「選んだらわかってもらえる」という経験を積んでいきます。
その経験が増えると、少しずつ指先が伸びたり、「こっち」「あっ」と声を出したりする姿につながることがあります。
共同注意を育てるうえで、「見て、まねする」経験も欠かせません。
大人の動きを見て、子どもが少しずつ同じように動いてみる遊びは、視線を向ける力と模倣の力を同時に育てます。
最初は、手を叩く、手を振る、バイバイをする、足踏みをするなど、短くてわかりやすい動きから始めてみましょう。
大人が「見て」と言いながら一度だけ見せるよりも、楽しそうに何度か繰り返す方が、子どもは入りやすくなります。子どもが少しでも似た動きをしたら、「まねできたね」と笑顔で返します。
ごっこ遊びも、共同注意を育てるよい機会になります。
おままごとのコップを使って「ジュースどうぞ」と見せる。ぬいぐるみに布団をかけて「ねんねしたね」と声を添える。歯みがきのおもちゃで「ごしごし」と動きを見せる。
このような生活に近い遊びは、発達障害のあるお子さまにも伝わりやすいことがあります。
子どもが見ているだけでも、同じ場面を共有している大切な時間です。無理に役割を求めず、まずは大人が楽しそうに見せるところから始めてみましょう。
共同注意を育てる遊びとして、絵本、乗り物、シャボン玉は家庭でも取り入れやすいものです。
絵本では、長く読み聞かせようとしなくても大丈夫です。子どもが好きなページを開き、「わんわんいたね」「赤い車だね」と、同じ絵を見ながら短く声をかけます。子どもがページをめくったり、絵に手を伸ばしたりしたら、その動きに合わせて反応を返します。
乗り物が好きなお子さまなら、車のおもちゃを一緒に走らせる遊びも向いています。
車がトンネルをくぐる、坂を下りる、ぶつかって止まるなど、動きがわかりやすい遊びは、子どもの視線が向きやすくなります。大人が「行くよ」「止まったね」と声を添えると、同じ出来事を共有しやすくなります。
シャボン玉は、目で追いやすく、消える瞬間に反応が出やすい遊びです。
大人がシャボン玉を吹く前に少し待つと、子どもが「まだかな」と見たり、手を伸ばしたりすることがあります。そのタイミングで「もう一回する?」と声をかけると、要求や視線のやりとりにつながりやすくなります。
遊びの目的は、正解を求めることではありません。
同じものを見て、同じタイミングで笑ったり、驚いたり、もう一回を求めたりする経験を増やすことです。その積み重ねが、共同注意やことばの育ちを支える土台になります。
共同注意を育てる遊びでは、どんな遊びをするかだけでなく、大人がどのように関わるかも大切です。
指差しや視線合わせは、子どもに無理にさせるものではなく、「見たい」「伝えたい」「一緒に楽しみたい」という気持ちの中から少しずつ育っていく力です。
家庭で遊びを取り入れるときは、子どもの小さな反応を見逃さず、「伝わった」「見てもらえた」「一緒に楽しめた」という経験につなげていきましょう。
視線合わせというと、「目を見てほしい」「こちらを向いてほしい」と考えがちですが、無理に目を合わせようとすると、子どもにとって負担になることもあります。
大切なのは、目と目が合うことそのものよりも、同じものを見て楽しむ経験です。
シャボン玉を一緒に目で追ったり、窓の外の車や鳥を見つけたり、絵本の好きなページを一緒に眺めたりする中で、「同じものを見ている」「一緒に楽しんでいる」という感覚が育っていきます。
子どもが一瞬でも大人の方を見たときには、「見てくれたね」「一緒に見られたね」と笑顔で返すことで、視線を向けることが安心できる経験になっていきます。
指差しがまだはっきり出ていない時期でも、子どもはさまざまな方法で気持ちを伝えようとしています。
欲しいものをじっと見る、手を伸ばす、体を近づける、声を出す、表情を変えるといった反応も、子どもなりの「これがいい」「見たい」「やってほしい」というサインです。
大人がその反応に気づき、「こっちがいいんだね」「これを見ていたんだね」と言葉にして返すことで、子どもは自分の気持ちが伝わったことを感じやすくなります。
指差しを急がせるのではなく、まずは子どもの視線や動きを受け止めることが、指差しや言葉につながる土台になります。
共同注意を育てるうえでは、子どもが見た、選んだ、まねした、反応した瞬間を大切にすることがポイントです。
たとえば、子どもがシャボン玉を目で追ったときに「見てたね」、好きなおやつに手を伸ばしたときに「これが食べたいんだね」、まねっこができたときに「よく見ていたね」と返してあげます。
このように、大人がすぐに反応を返すことで、子どもは「自分の行動に意味があった」「伝えたら応えてもらえた」と感じやすくなります。
言葉がまだ出ていない段階でも、こうしたやりとりの積み重ねが、伝える力や人と関わる意欲を育てていきます。
指差しや視線合わせの練習では、「できた」「できない」に注目しすぎないことも大切です。
子どもによって、視線を向けるタイミングや反応の出方は異なります。すぐに目が合わない、指差しが出ない、まねっこをしないことがあっても、それだけで失敗ではありません。
大人が子どもの興味に合わせて関わり、少しでも反応が見られたときに楽しく受け止めることで、子どもは安心してやりとりに参加しやすくなります。
「見てくれた」「選べた」「一緒に笑えた」という小さな経験を重ねることが、共同注意やコミュニケーションの力を育てる大切な一歩になります。
共同注意は、ことばや社会性の土台となる力ですが、育ち方はお子さまによって異なります。
発達障害の診断や特性の有無にかかわらず、「名前を呼んでも振り向きにくい」「目が合いにくい」「指差しが少ない」「まねっこ遊びに入りにくい」といった悩みを、保護者の方だけで抱え込んでしまうことは少なくありません。
大切なのは、子どもに無理をさせることではなく、その子が反応しやすい遊びや関わり方を見つけていくことです。
大人の見せ方を少し変えるだけで、子どもがこちらを見る時間が増えることもあります。好きな遊びを入口にすることで、指差しやまねっこが出やすくなることもあります。
児童発達支援事業所ゆめラボでは、共同注意や指差し、視線、ことばの育ちに不安があるご家庭からのご相談をお受けしています。
教室では、一人ひとりのお子さまの特性やペースに合わせて、遊びを通した療育を行っています。また、保護者の方と一緒に、家庭で続けやすい関わり方も考えていきます。
「このままで大丈夫かな」「目が合いにくいのが気になる」「どんな遊びをしたらいいのかわからない」と感じたときは、お近くのゆめラボへお気軽にお問い合わせください。
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