国語の物語文を読んで、物語で起きた出来事や登場人物の名前は答えられる。それなのに「このとき、主人公はどんな気持ちだったでしょう」と聞かれると、急に答えられなくなる。
ASD(自閉スペクトラム症)のある小学生の中には、文章に書かれている事実は理解できても、直接書かれていない登場人物の気持ちや考えを読み取ることに難しさがある子がいます。
保護者の方から見ると、「文章は読めているのに、なぜ気持ちの問題だけ分からないのだろう」と感じるかもしれません。しかし、物語文の心情問題では、文章を読むだけでなく、出来事、会話、行動、表情、場面の変化などを手がかりにして、登場人物の内面を推測する必要があります。
そのため、「登場人物の気持ちになって考えて」と繰り返すだけでは、どこを手がかりに考えればよいのか分からないままになることがあります。
このページでは、ASDの小学生が国語で登場人物の気持ちを読み取りにくい理由、物語文の心情問題でつまずきやすい場面、本文から手がかりを探す方法、家庭や放課後等デイサービスでできる読解支援について、ゆめラボがご紹介します。
INDEX
ASDのある小学生すべてが国語の心情問題を苦手とするわけではありません。一方で、文章に直接書かれた内容は理解できても、書かれていない意図や気持ちを推測する問題になると難しさが目立つ子がいます。
国語の読解でのつまずきを確認するときは、「文章が読めない」のか、「出来事は分かるが気持ちを推測しにくい」のかを分けて考えることが大切です。
音読や文字を追うこと自体に強い負担がある場合は、心情理解とは別のつまずきが関係していることがあります。音読や文字を読むこと自体に困りごとがある場合は、小学生の音読で読み飛ばしが多いときに|発達障害・学習障害が気になる子の家庭支援もあわせてご覧ください。
物語文では、「太郎は悲しかった」と気持ちがそのまま書かれているとは限りません。
「うつむいた」「返事をせずに部屋を出た」「大切にしていた物をそっと机に置いた」といった行動から、そのときの登場人物の気持ちを考える問題があります。
ASDのある小学生の中には、文章に書かれている「部屋を出た」という事実は捉えられても、そこから「悲しかった」「怒っていた」「話したくなかった」といった気持ちを推測することが難しい子がいます。
このような場合は、答えだけを教えるのではなく、「気持ちを考えるために本文のどこを見るのか」を一緒に確認します。
登場人物の気持ちは、一つの文章だけで判断できないことがあります。
たとえば、友だちに声をかけられた人物が「別に」と答え、そのあと顔を伏せて黙ってしまった場面では、会話だけでなく、その後の行動や表情まで読むことで気持ちを考えやすくなります。
ところが、一つひとつの文章は理解できても、複数の情報を結び付けることが難しいと、「『別に』と言ったから何とも思っていない」と受け取ることがあります。
会話、行動、表情を一度に考えさせるのではなく、まず会話を確認し、次に行動を確認するというように順番を決めると、心情につながる手がかりを見つけやすくなります。
物語には、自分とは違う考え方や経験を持つ人物が登場します。
自分ならうれしいと感じる出来事でも、登場人物にとっては困る出来事かもしれません。反対に、自分は気にならないことで登場人物が強く傷ついている場面もあります。
ASDのある小学生の中には、登場人物の立場や視点へ切り替えて考えることに難しさがあると、「自分だったらこう思う」という答えと「この登場人物はどう感じたか」が混ざることがあります。
その場合は、「自分だったらどう思う?」と聞く前に、「この人物には何が起きた?」「この人物は何を大切にしていた?」と、本文に書かれた登場人物の状況から考えます。
登場人物が何かを感じていることには気づいていても、その気持ちを表す言葉がすぐに出てこない子もいます。
「悲しい」「悔しい」「寂しい」「不安」「がっかりした」「恥ずかしい」など、似た感情の言葉から場面に合うものを選ぶ必要があるためです。
たとえば、試合に負けた場面で「悲しい」と答えても間違いとは限りません。しかし、本文に「あと少しで勝てたのに」とあるなら、「悔しい」の方が登場人物の気持ちに近いと考えられます。
感情を表す言葉が出にくい子には、最初から一つの言葉を自力で出させるのではなく、いくつかの感情から選び、その理由を本文で確認する方法があります。

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ASDの小学生が国語でつまずく場面は、「文章が難しいとき」だけではありません。文章自体は読めていても、心情を問われると答えられなくなることがあります。
どの段階でつまずいているのかを確認すると、その子に必要な読解支援を考えやすくなります。
「このときの主人公の気持ちを答えましょう」と聞かれ、本文の中から「うれしい」「悲しい」と書かれた場所を探し続ける子がいます。
しかし、物語文では気持ちが直接書かれず、行動や会話によって表されていることが少なくありません。
文章の中に答えそのものが書いてあると思って探していると、どれだけ読み返しても見つかりません。
この場合は、「気持ちの言葉を探す問題」ではなく、「気持ちが分かる手がかりを探す問題」であることを伝えます。
物語文では、登場人物の気持ちが最初から最後まで同じとは限りません。
最初は嫌がっていた人物が、ある出来事をきっかけに興味を持つ。怒っていた人物が、相手の事情を知って気持ちを変える。このような変化を読む問題があります。
ASDのある小学生の中には、一つひとつの出来事は答えられても、「どの出来事をきっかけに気持ちが変わったのか」をつなげて捉えにくい子がいます。
場面ごとに「最初の気持ち」「起きたこと」「その後の気持ち」を確認すると、心情の変化を追いやすくなります。
「自分だったら絶対に怒らないから、この人も怒っていない」「自分なら怖いから、この人も怖いはず」と考えることがあります。
自分の感じ方を答える問題であれば、それで構いません。しかし、登場人物の気持ちを問う問題では、その人物の置かれた状況や本文中の言動を根拠に考える必要があります。
「あなたならどう思う?」と「主人公はどう思った?」を混ぜず、別の質問として扱うことが重要です。
登場人物について答えるときは、「自分なら」ではなく「この人物に何が起きたか」を確認します。
「悲しいと思う」「怒っていると思う」と答えることはできても、「どうしてそう思ったの?」と聞くと答えられないことがあります。
偶然正しい感情を選べていても、本文とのつながりを理解していなければ、別の物語文で同じ考え方を使うことが難しくなります。
国語の読解では、「どんな気持ちか」と「なぜそう考えたか」をセットで確認します。
「悲しい。なぜなら、大切にしていた物がなくなったから」というように、気持ちと本文の出来事を結び付ける練習を重ねます。
登場人物の気持ちは、なんとなく想像するだけでなく、本文の手がかりから考えることができます。物語文の中には、心情を考えるための材料があります。
ASDのある小学生には、「気持ちを想像して」だけではなく、本文のどこを確認すればよいのかを具体的に伝えます。
心情問題では、登場人物に何が起きたのかを先に確認します。
友だちから褒められた、大切な物をなくした、待っていた人が来た、努力していたことに失敗したなど、出来事が変われば気持ちも変わります。
まず「この前に何が起きた?」を確認し、そのあとで「その出来事が起きたあと、この人はどうした?」と読み進めます。
いきなり気持ちを考えさせるより、出来事の前後を追うことで、心情を推測する材料が増えます。
登場人物の言葉や行動には、気持ちを考える手がかりが含まれています。
「もういい」と言って走って帰ったのであれば、言葉だけでなく「走って帰った」という行動も確認します。「ありがとう」と何度も言ったのであれば、その繰り返しにも注目します。
本文を読むときに、登場人物の会話には線を引き、気になる行動には別の印をつけると、離れた場所にある情報を結び付けやすくなります。
ただし、文章全体に印をつけると重要な部分が分からなくなるため、心情につながる部分だけを選びます。
物語では、「泣いた」「笑った」だけでなく、「目をそらした」「うつむいた」「拳を握った」「小さくうなずいた」といった表現で登場人物の様子が描かれることがあります。
このような表現は、気持ちを考える大切な材料です。
ただし、「うつむいたら必ず悲しい」というように、一つの表情やしぐさと一つの感情を固定して覚えさせるのは適切ではありません。
同じしぐさでも、前後の出来事によって意味は変わります。「何が起きたあとに、この動きをしたのか」まで確認して心情を考えます。
登場人物が複数いる物語では、「誰の気持ちを聞かれているのか」が分からなくなることがあります。
そのようなときは、場面ごとに「誰が」「何をした」「そのあとどうなった」を確認します。
たとえば、「弟が失敗した」「兄が何も言わず手伝った」「弟が笑った」という流れが分かれば、兄と弟それぞれの気持ちを考える準備ができます。
人物と出来事を先に確認してから心情へ進むことで、誰の気持ちを考えているのかを見失いにくくなります。
ASDの小学生への国語読解支援では、「もっと想像して」と求めるのではなく、心情を考える手順を一つずつ示します。
最初は大人と一緒に練習し、慣れてきたら自分で本文から手がかりを探せるようにしていきます。
最初から「どんな気持ち?」と聞かず、まず出来事を確認します。
「何が起きた?」「その前はどうだった?」「そのあと、この人物は何をした?」と事実を確認したあとに、「では、このときどんな気持ちだったと思う?」と進みます。
出来事と気持ちを分けることで、文章に書かれた事実と、そこから考える心情を混同しにくくなります。
この順番を繰り返すと、初めて読む物語文でも、どこから考えればよいのかをつかみやすくなります。
心情を答えたら、「そう思ったのは、どの文章から?」と本文へ戻ります。
正解したかどうかだけではなく、自分の答えにつながった部分を探すことが重要です。
最初は大人が「この近くに手がかりがあるよ」と範囲を狭くしても構いません。慣れてきたら、自分で会話や行動を探して印をつけます。
「気持ちを当てる」学習ではなく、「本文を使って気持ちを考える」学習に変えることで、読解の方法を身につけやすくなります。
気持ちは分かっていても、それを表す言葉が出ない子には、感情語の選択肢を用意します。
たとえば、「うれしい・安心した・悔しい・不安・寂しい」の中から近いものを選び、「なぜそれを選んだのか」を本文とつなげます。
最初から多くの選択肢を出す必要はありません。二つや三つから始め、似た感情の違いを場面と結び付けて学びます。
選べるようになったら、少しずつ自分の言葉で答える練習へつなげます。
文章だけでは人物関係や気持ちの変化を追いにくい子には、登場人物、出来事、気持ちを図や表で示します。
人物の名前を書き、その横に「起きたこと」「その後の行動」「考えられる気持ち」を対応させると、文章の中で離れていた情報をつなげやすくなります。
気持ちが途中で変わる物語では、最初と最後を並べて見る方法もあります。
視覚化すること自体が目的ではなく、本文のどの出来事と心情がつながっているのかを確認するために使います。
長い物語文では、登場人物、出来事、場面の移り変わり、会話など、把握しなければならない情報が増えます。
心情問題に強い苦手さがある子には、最初から長い文章を何度も読ませるより、登場人物が少なく、出来事が一つか二つの短い文章から始めます。
短い文章で「何が起きた」「この人はどうした」「どんな気持ち」「どこからそう考えた」という流れを繰り返します。
読み方が身についてきたら、少しずつ場面数や登場人物の多い物語へ広げます。
登場人物の気持ちが分からないと、大人は「もっと相手の立場になって」「普通ならこう思うでしょう」と説明したくなることがあります。
しかし、それだけでは次の問題を自分で解く方法にはつながりません。心情問題では、正解を覚えることより、本文から根拠を探して考える方法を身につけることが重要です。
「主人公の気持ちになって考えて」と言われても、何をすればよいのか分からない子がいます。
気持ちになりきることを求めるより、「この人に何が起きた?」「そのあと何をした?」「どんな言葉を言った?」と、確認する場所を示します。
登場人物と同じ感情を実際に感じる必要はありません。国語の心情読解では、本文を根拠に人物の気持ちを考えることが大切です。
「こういうときは悲しい」「負けたら悔しい」と答えだけを覚えさせると、似た場面では答えられても、少し違う物語になると迷うことがあります。
同じ出来事でも、登場人物の性格や目的、それまでの経緯によって気持ちは変わります。
「この場面は悔しい」と覚えるのではなく、「本文のこの言葉とこの行動から、悔しいと考えた」という過程まで確認します。
心情問題に正解できたときも、「合っていた」で終わらせず、本文のどの表現を根拠にしたのかを確認します。
反対に、不正解だったときも、すぐ正解を伝えるのではなく、「どの文章を見てそう思った?」と考えた根拠を聞きます。
根拠を確認すると、気持ちの読み取りが難しいのか、出来事を読み違えているのか、誰の気持ちを問われているか分かっていないのかを判断しやすくなります。
間違いを直すだけでなく、どこから考え直せばよいのかを一緒に確認します。
国語で登場人物の気持ちを答えられないことと、現実の生活で人を思いやれないことは同じではありません。
家族や友だちを大切にしている子でも、文章から間接的な手がかりを拾い、登場人物の心情を言葉にする課題では難しさが出ることがあります。
「人の気持ちが分からない子」と決めつけるのではなく、国語の問題のどの部分でつまずいているのかを確認します。
実際の友だち関係や対人場面での支援については、友だちトラブルが減る?ASDの対人スキルを育てる放課後等デイサービスで別の視点からご紹介しています。
ASDのある小学生の中には、国語の物語文を読むことはできても、文章に直接書かれていない登場人物の気持ちを読み取ることに難しさが出る子がいます。
心情問題では、出来事、会話、行動、表情などを手がかりにしながら、「何が起きたのか」「そのあと人物がどうしたのか」「そこからどのような気持ちが考えられるのか」をつなげて読む必要があります。
家庭では、「登場人物の気持ちになって」と繰り返すより、出来事を確認する、心情につながる文章へ印をつける、感情語を選択肢から選ぶなど、答えまでの手順を具体的にします。
放課後等デイサービスゆめラボジュニアでは、小学生のお子さま一人ひとりの学習面や生活面の困りごとを見ながら、個別課題や小集団活動を行っています。国語の読解についても、文章を読む力だけでなく、どの情報に注目し、本文のどこを根拠に考えるかを確認しながら取り組みます。
「物語文になると急に答えられない」「登場人物の気持ちを聞かれると止まってしまう」「国語の心情問題を家庭でどう教えればよいか分からない」など、小学生の学習について気になることがある方は、放課後等デイサービスゆめラボジュニアをご覧ください。
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