授業参観でお子さまのノートを見ると、黒板にはたくさん書かれているのに、ノートは途中までしか写せていないことがあります。担任の先生から「板書が間に合っていないようです」と言われた。このようなことが続くと、「授業を聞いていないのかな」「発達障害と関係があるのだろうか」と心配になる保護者の方もいらっしゃいます。
黒板に書かれた内容をノートに写す作業は、一見すると単純に見えます。しかし実際には、黒板を見る、書かれている内容を覚える、ノートへ視線を移す、覚えた文字を書く、再び黒板を見て続きを探すという動きを何度も繰り返しています。
そのため、文字そのものは書ける子でも、黒板をノートに写す場面になると急に時間がかかることがあります。どの段階で負担が大きくなっているか分からないままでは、「もっと早く書いて」と急かしても板書の負担は減りません。
このページでは、放課後等デイサービスゆめラボの視点から、板書が苦手な小学生と発達障害との関係、黒板をノートに写せない理由、学校で見られやすい様子、家庭や学校で考えたい対処法について解説します。
黒板をノートに写すのが遅い、授業時間内に板書が終わらないという様子があっても、それだけで発達障害と判断することはできません。
まずは「板書ができるか、できないか」だけを見るのではなく、黒板を見てからノートに書くまでのどの段階で止まりやすいのかを見ていく必要があります。
小学生が板書に時間がかかる理由は一つではありません。入学して間もなく、まだ黒板を見ながらノートを取ることに慣れていないこともあれば、文字を書く速度そのものがゆっくりなこともあります。
また、黒板の文字が小さく見えにくい、席から黒板が見えにくいといった場合には、発達特性とは別の理由を考える必要があります。目を細めて黒板を見る、極端に顔を近づけてノートを見るといった様子がある場合には、視力や目の状態について確認することも必要です。
大切なのは、「板書が遅いから発達障害」と一つの行動だけで結びつけないことです。どの教科でも同じように困っているのか、短い文章なら写せるのか、プリントへの書き込みではどうなのかなど、場面による違いを見ると理由を考えやすくなります。
一方で、発達障害のある小学生の中には、板書に強い負担を感じる子がいます。書くことに強い苦手さがある、見た内容を短い時間覚えておくことが難しい、周囲の刺激に注意が移りやすいなど、困り方はその子によって異なります。ADHD(注意欠如・多動症)のある子では周囲の音や人の動きへ注意が移りやすいことがあり、SLD(限局性学習症)の中でも書字に強い苦手さがある子では、書く速度が板書に追いつかないことがあります。
たとえば、黒板で「明日の天気は晴れです」という文章を見ても、ノートへ目を移したときには「明日の天気は」までしか覚えておらず、もう一度黒板を確認する子がいます。一文を書くために何度も顔を上げ下げすることになれば、その分、周りの子より板書に時間がかかります。
限局性学習症(SLD)など読み書きそのものに強い苦手さがある場合には、板書以外の場面でも困りごとが見られることがあります。
読み書きや計算全体について知りたい場合は、学習障害・SLDの小学生への読み書き・計算支援もあわせてご覧ください。
同じ「黒板を写せない」という状態でも、子どもによってつまずく段階は違います。
黒板のどこから写し始めればよいかを探すところで時間がかかる子もいれば、黒板では読めているのにノートへ目を移すと内容を忘れてしまう子もいます。書き始めることはできても、再び黒板を見たときにどこから続きを写せばよいか分からなくなる子もいます。
さらに、文字を書くこと自体に時間がかかっている場合もあります。原因が違えば、必要な対処も変わります。
まず「何文字くらいなら一度に写せるのか」「どの場面で黒板を何度も見直しているのか」を見ることが、板書の負担を減らす第一歩になります。
板書を写すときは、見ることと書くことを繰り返しながら、授業の進行にもついていかなければなりません。
主に3つの段階で負担が出やすくなります。
黒板に書かれた文字を見てからノートへ書くまでの短い間にも、見た内容を頭の中に残しておく必要があります。このように、必要な情報を一時的に覚えながら作業する力は「ワーキングメモリ」と呼ばれ、板書ではこの力を繰り返し使います。
たとえば「植物の成長には日光が必要」と黒板に書かれていたとします。一度見ただけで文章のまとまりを覚えられる子であれば、数文字から一文程度をまとまりとして覚え、ノートに書けます。しかし、一度に覚えられる量が少ないと、「植物の」「成長には」「日光が」と細かく区切って何度も黒板を見ることになります。
このように、覚えておける時間や量によって板書の速さには差が出ます。本人は黒板を何度も確認しながら懸命に書いているため、周囲から「集中していない」と見えても、実際には一つの文章を写すためだけに、注意と記憶を何度も使っていることがあります。
板書では、黒板からノート、ノートから黒板へと視線を何度も移します。そのたびに「黒板のどこを見ていたか」「ノートのどこまで書いたか」を見つけ直す必要があります。
この視線移動のたびに位置を探し直すことが苦手な子は、黒板へ顔を上げたあとに続きを探すだけで時間がかかります。似た文章が上下に並んでいると違う行を写したり、一行飛ばしてしまったりすることもあります。
板書以外でも、文章を読むと行を飛ばす、探し物に時間がかかる、見本と自分の手元を見比べる作業が苦手といった様子がある場合には、こうした視線の動きも確認したい点です。
こうした力については、発達が気になる子の「見る力」を育てる目の使い方でも解説しています。
黒板のどこを写せばよいか分かり、内容も覚えられているのに、文字を書く速度が追いつかない子もいます。
一文字ずつ形を確かめながら書く、漢字を書くたびに手が止まる、マスや罫線からはみ出さないよう強く意識するといった場合には、一文を書き終えるまでに時間がかかります。その間にも授業は進むため、黒板を消される前に最後まで写せないことがあります。
文字を書くのが遅いからといって、単純に書く量を増やせばよいとは限りません。
姿勢や鉛筆の動かし方など、書く動作そのものにも負担がある場合は、文字が苦手な子の書字前スキルについての記事も参考にしてください。

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板書の苦手さは、ノートの空白が多いことだけに表れるわけではありません。
学校では一生懸命に取り組んでいるため、本人の困りごとが周囲から見えにくい場合もあります。
黒板とノートを何度も見比べているのに、授業が終わると半分程度しか書けていないことがあります。
この場合、「黒板を見ていない」のではありません。
むしろ、何度も黒板を確認しなければ一つの文章を書き進められないため、周囲より視線の往復が増えている可能性があります。
授業参観などで見る機会があれば、ノートの完成度だけではなく、一度黒板を見てから何文字くらい書いているかにも注目してみてください。
一文字や二文字ごとに黒板を見直している場合は、見た内容を覚えてから書くまでの過程に大きな負担がかかっていることが考えられます。
黒板の文章を写している途中で一行飛ばしたり、同じ部分をもう一度書いたり、一部の文字が抜けたりすることがあります。
特に、黒板に文字や図が多く書かれていると、視線を戻したときに続きを見つけにくくなります。ノート側でも、どの行へ書けばよいか分からなくなり、途中から別の場所へ書いてしまうことがあります。
このような間違いが続くと、「ちゃんと黒板を見て」と注意されることがありますが、本人も見ようとしている場合があります。見る回数を増やすことよりも、黒板でもノートでも続きを見つけやすくする方法を考える方が負担を減らしやすくなります。
ノートは最後まで書けていても、授業の内容を尋ねると「分からない」と答える子もいます。
これは、板書を終わらせることに多くの力を使い、先生の説明を聞く余裕がなくなっている場合があります。黒板を見る、覚える、書くという作業を続けながら先生の話も聞くことは、子どもによっては大きな負担になります。
ノートを取る目的は、黒板に書かれた文字を一字残らず写すことではありません。授業で学んだ内容を理解し、あとから振り返れる形に残すことです。
ノートを完成させることに追われて説明を聞けなくなっているのであれば、書く量や記録方法を見直す必要があります。
板書が苦手な子への対処では、「周りと同じ速さで全部書けるようにする」ことだけを目標にしないことが大切です。
何のためにノートを取るのかを考え、授業内容を理解しやすい方法を学校と相談していきます。
黒板に書かれた内容をすべて写そうとすると、書くことだけで授業が終わってしまう子がいます。その場合は、最低限どこを書けばよいのかが分かるようにすると負担を減らせます。
たとえば、先生が色を変えた部分だけを書く、大切な言葉だけを書く、まとめの部分を優先するといった方法があります。「全部書かなくてはいけない」という状態から、「ここは書く」と書く範囲が決まっている状態に変わることで、先生の説明を聞く時間も確保しやすくなります。
何を書き残すかを子ども自身が毎回判断することが難しい場合には、最初から本人だけに任せるのではなく、担任の先生と書く範囲を決めておく方法も考えられます。
板書の量を減らしても授業についていくことが難しい場合は、黒板の内容を別の形で残せないか学校へ相談する方法があります。
授業で使ったプリントを活用する、黒板と同じ内容が入った資料に必要な部分だけ書き込む、学校のルールに沿ってタブレットで記録するなど、方法はいくつか考えられます。
大切なのは、タブレットを使うこと自体を目的にしないことです。手書きならどこまでできるのか、どの場面だけ負担が大きいのかを見たうえで、本人が授業内容を理解しやすい方法を選びます。
板書が終わらないことで休み時間までノートを書いている、授業内容をほとんど聞けていないといった状態が続いている場合は、その具体的な様子を担任の先生へ伝えると相談しやすくなります。
黒板までの距離が遠い、周囲の掲示物や人の動きが目に入りやすいなど、座席によって黒板の見やすさやノートの取りやすさが変わる子もいます。
黒板を見ること自体に時間がかかっている場合には、前方の席など黒板を確認しやすい場所について学校へ相談する方法があります。
ただし、前方の席がすべての子に合うわけではないため、本人が見やすい位置を学校と相談します。
ノートについても、その子が書く位置を見つけやすいものを試せます。
行を見失いやすい場合には罫線が見やすいノート、文字の位置を決めにくい場合にはマスが大きいノートなど、その子が書く場所を見つけやすいものを試します。
ノートを変える目的も、きれいな字を書かせることではありません
。黒板から視線を戻したときに「次はここ」と見つけやすくし、板書にかかる負担を少なくすることが目的です。
黒板をノートに写せない、板書が授業時間内に終わらないという様子だけで、発達障害と判断することはできません。
一方で、発達に特性のある小学生では、黒板で見た内容をノートへ書くまで覚えておくこと、黒板とノートの間で続きを探すこと、文字を書くことなどに負担があり、板書が難しくなることがあります。
大切なのは、「板書が遅い」という結果だけを見るのではなく、一度にどのくらい写せるのか、何度も黒板を見直していないか、書くことに追われて先生の話を聞けなくなっていないかを見ることです。
すべてを書き写すことが大きな負担になっている場合には、書く部分を絞る、プリントやタブレットを活用できるか相談する、座席やノートを変えるなど、その子が授業内容を理解しやすい方法を考えていきます。
放課後等デイサービスゆめラボジュニアでは、小学生のお子さまの学習面や学校生活での困りごとについてもご相談いただけます。
板書が間に合わない、ノートを書くことに時間がかかる、板書に追われて先生の説明を聞けないなど、お子さまの様子が気になる方は、お近くのゆめラボへご相談ください。
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