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療育コラム

2026.09.07

お絵描きを嫌がる・何を描けばいいか分からない子|発達の背景と遊びの広げ方

 

園で「好きなものを描いてみよう」と言われると手が止まったり、家で紙とクレヨンを渡しても「何を描けばいいか分からない」と言ってお絵描きを嫌がったりすることがあります。このような様子が続くと、「絵が苦手なのかな」「発達障害と関係があるのだろうか」と気になる保護者の方もいらっしゃいます。

 

お絵描きを嫌がる子の中には、線を引いたり見本をまねたりすることはできても、「何を描くかを自分で決める」場面になると止まってしまう子がいます。線や形を描けても、自由画になると描き始められないことがあります。

 

自由に絵を描くときは、描きたいものを思い浮かべる、どこから描き始めるか決める、頭に浮かべたものを線や形に変えるなど、いくつものことを自分で決めながら進めます。そのため、「何でも好きに描いて」と言われることが、かえって難しく感じられる子もいます。

 

このページでは、児童発達支援事業所ゆめラボの視点から、お絵描きを嫌がる子どもと発達障害・ASDとの関係、「何を描けばいいか分からない」となる理由、見られやすい様子、家庭で描く遊びを広げる関わり方について解説します。

お絵描きを嫌がる・何を描けばいいか分からないのは発達障害?

 

お絵描きを嫌がったり、自由画になると何を描けばいいか分からなくなったりしても、それだけで発達障害と判断することはできません。

絵への興味、これまでのお絵描き経験、描く動作の得意不得意など、子どもによって理由はさまざまです。

 

一方で、ASDなど発達に特性のある子どもの中には、自由画よりもテーマや見本がある活動の方が取り組みやすい子もいます。大切なのは「絵が描けるか」だけではなく、どの段階で手が止まっているのかを見ることです。

お絵描きが苦手なだけで発達障害とは判断できない

絵を描くことが好きな子もいれば、外遊びやブロック、乗り物など別の遊びを好む子もいます。お絵描きにあまり興味がないことだけで、発達障害と結びつけることはできません。

 

また、まだお絵描きの経験が少なく、「何を描けばいいの?」と戸惑っている場合もあります。園では周りの子がすぐ描き始めるため、自分だけ止まっているように見えても、家庭では好きなキャラクターなら描こうとする子もいます。

 

まず確認したいのは、お絵描きそのものを嫌がるのか、それとも「自由に描いて」と言われたときだけ困るのかという違いです。ここが分かると、描く動作の苦手さなのか、何を描くか決める部分で困っているのかを考えやすくなります。

ASDの子どもでは自由画で描き始めにくい場合がある

ASDのある子どもでも、お絵描きが得意な子、好きなものを細かく描く子、絵にあまり興味を示さない子などさまざまです。そのため、「ASDだから自由画ができない」と考えることはできません。

 

一方で、自由画のようにテーマが決まっていない活動では、最初の一歩を決めるまでに時間がかかる子がいます。「車を描こう」のようにテーマが決まっていれば始められるのに、「好きなものを描いて」と言われると候補が多くなり、何を選べばよいか分からなくなる場合です。

 

このようなときは、想像力がないと決めるのではなく、「何を描くか自分で決めるところで止まっているのか」「描きたいものはあるけれど形にできないのか」を分けて見ることが大切です。

描く動作より「何を描くか決めること」で止まっている子もいる

丸や線を描ける、見本の形をまねられる、好きなキャラクターを見ながらなら描ける。それでも白い紙を渡すと手が止まるのであれば、描く動作よりも「何を描くか決めること」が負担になっている可能性があります。

 

反対に、線を引くこと自体を嫌がる、クレヨンを持つとすぐ疲れる、丸や線のまねも難しい場合は、手先を動かすこと自体の苦手さも考えます。

 

描く動作そのものに苦手さが見られる場合は、文字を書くのを嫌がる未就学児への関わり方も参考にしてください。

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子どもが「何を描けばいいか分からない」となるのはなぜ?

 

「好きなものを描いていいよ」は、大人には簡単な言葉に聞こえます。しかし子どもは、たくさんある候補から一つを選び、それを頭に浮かべ、紙のどこから描き始めるかまで自分で決めなければなりません。

 

そのため、描く力はあっても、自由画になると手が止まることがあります。

主に、何を描くか選ぶ、頭に浮かべたものを形にする、何から描くかを決める場面で難しさが表れます。

「好きなものを描いて」のような自由な指示では選択肢が多すぎる

「りんごを描いて」と言われれば描けるのに、「好きなものを描いて」と言われると止まる子がいます。この場合、絵そのものではなく、何を描くか決めるところで迷っています。

 

車、電車、動物、家族、食べ物など、頭の中にたくさん候補があると、一つに決めることが難しくなることがあります。「何でもいいよ」と自由にするほど描きやすくなるとは限りません。

 

特に普段から「どっちでもいいよ」「好きな方を選んで」と言われたときに決めるまで時間がかかる子では、お絵描きでも同じように何を描くか決めるところで止まることがあります。

頭に浮かべたものを線や形にして表すことが難しい

「犬を描きたい」「公園を描きたい」と描く内容は決まっていても、頭に浮かべたものを紙の上にどう表せばよいか分からない子もいます。

 

たとえば犬を思い浮かべても、最初に顔を描くのか体を描くのか、耳はどこにつけるのか、どのくらいの大きさにすればよいのかが分からず、「描けない」となる場合があります。

 

この場合、子どもの中にイメージがないとは限りません。口では「茶色い犬」「耳が長い犬」と説明できるのに、紙に描こうとすると止まることもあります。言葉で説明できるか、見本があれば描けるかを見ると、どこで困っているのかが分かりやすくなります。

何から描くか・次に何を足すかを自分で決めにくいことがある

一枚の絵を完成させるには、描きたいものを決めるだけでなく、「最初に何を描くか」「次に何を足すか」を考えながら進めます。

 

たとえば公園の絵なら、すべり台から描くのか、人から描くのか、地面や空も描くのかを自分で決めます。描き始めたあとも、空いている場所を見ながら次に何を足すか考えます。

 

自由画では、描き始めたあとも次に何を足すか自分で決める場面が続きます。

見本を写す場合は次に描くものが見えていますが、自由画では自分で決め続ける必要があるため、途中で「もう分からない」となる子もいます。

お絵描きが苦手な子どもに見られやすい様子

 

お絵描きの困り方は、単に「絵を描きたがらない」だけではありません。白い紙では止まるのに見本があると描ける、毎回同じものだけ描くなど、見本の有無や声のかけ方によって様子が変わることがあります。

 

どの場面なら描き始められるのかを見ると、子どもが苦手としている部分をつかみやすくなります。

白い紙を渡されると手が止まり「描けない」と言う

クレヨンや色鉛筆を持つことはできても、白い紙を前にすると何も描かず、「描けない」「分からない」と言う子がいます。

 

この場合、「上手に描けないから嫌なのか」「何を描くか決められないのか」は分けて考えます。子どもに「車なら描く?犬なら描く?」と二つほど候補を出したときに描き始められるのであれば、何を描くか決める部分が負担だった可能性があります。

 

反対に、テーマを決めても描き始められない場合は、「どこから描くのか」「どんな形にすればよいのか」まで分からない可能性があります。

見本をまねることはできても自由画になると描き始められない

先生が描いた丸や顔はまねられる、好きなキャラクターを見ながらなら描けるのに、「今度は自分で好きな絵を描こう」となると止まる子もいます。

 

見本があると、何を描くか、どこから始めるか、どんな形を使うかが目で分かります。自由画になると、見本から分かっていた「何を描くか」「どこから始めるか」を自分で決める必要があります。

 

そのため、「見本を見れば描けるなら本当はできるはず」と考えて自由画を繰り返させるより、見本があるとどの部分が分かりやすくなるのかを見る方が、次の遊びにつなげやすくなります。

いつも同じ物や同じ描き方を繰り返すことがある

自由に描いてよい場面でも、毎回電車、車、同じキャラクターなど、決まったものだけを描く子がいます。同じ構図や同じ色を繰り返すこともあります。

 

好きなものを何度も描くこと自体は問題ではありません。好きな絵を繰り返し描く中で、描ける形や表現が少しずつ増えることもあります。

 

遊びを広げたいときは、「また車なの?」と否定するのではなく、いつもの車に道路を足す、人を乗せる、信号を描くなど、好きなものから少しだけ要素を増やす方法が取り入れやすくなります。

お絵描きを嫌がる子に家庭でできる遊びの広げ方

 

お絵描きを嫌がる子に、最初から「自由に何でも描いて」と求める必要はありません。描き始めるための手がかりがあると、自分から別のものを足したり、一部分を変えたりしやすくなる子もいます。

 

家庭では完成度を求めるより、「自分で一つ決められた」「一部分を変えられた」という経験を重ねながら、少しずつ自由に描ける範囲を広げます。

「何でも描いて」ではなく二つほどのテーマから選べるようにする

白い紙を渡して「好きなものを描いて」と言うと止まる子には、最初から選択肢を少なくします。

 

たとえば「車と電車、どっちを描く?」「犬と猫ならどっちがいい?」と二つほど示します。何を描くか決まれば、その後は自分で進められる子もいます。

 

慣れてきたら、「今日は何を描く?」と子ども自身に描きたいものを挙げてもらうなど、少しずつ自分で決める場面を増やします。最初から何でも自由に選ばせるのではなく、決めやすい範囲から始めます。

見本をまねるところから始めて一部分だけ自分で変えてみる

見本があれば描ける子には、見本を使うこと自体をやめさせる必要はありません。まず同じように描き、そのあと一部分だけ自分で変える方法があります。

 

たとえば見本の車を描いたあと、「タイヤの色は何色にする?」「誰を乗せる?」と聞きます。家の絵なら、窓の形を変える、庭に花を足すなど、一つだけ本人が決める部分を作ります。

 

すべてを一から考えるより、すでにある絵を少し変える方が取り組みやすい子もいます。慣れてきたら、少しずつ自分で決める部分を増やしていきます。

好きなおもちゃや写真を見ながら描いて形を確認しやすくする

頭の中だけで描きたいものを思い浮かべることが難しい場合は、好きなおもちゃや写真を目の前に置いて描く方法があります。

 

ミニカーを見ながら車を描く、家族写真を見ながら顔を描く、公園で撮った写真を見ながらすべり台を描くなど、実物や写真があると「何を描くか」「どんな形だったか」を確認しながら進められます。

 

描き終わったあとに「次は何を足そうか」と一つだけ問いかけると、見たものを描くところから、自分で要素を足す遊びへ広げやすくなります。

 

目で見た形をまねること自体にも苦手さがある場合は、発達が気になる子の「見る力」を育てる目の使い方あそびも参考にしてください。

まとめ|お絵描きが苦手な子には自由に描かせる前に描き始めやすい手がかりを作ろう

 

お絵描きを嫌がる、「何を描けばいいか分からない」と言うからといって、それだけで発達障害と判断することはできません。

 

子どもの中には、線を引いたり見本をまねたりすることはできても、何を描くか決める、頭に浮かべたものを形にする、描く順番を考える必要がある自由画になると手が止まる子がいます。

 

家庭では、最初から「何でも好きに描いて」と求めるより、二つほどのテーマから選ぶ、見本の一部分だけ変える、好きなおもちゃや写真を見ながら描くなど、描き始める手がかりを作る方法があります。

 

児童発達支援事業所ゆめラボでは、完成した絵だけを見るのではなく、何を描くか決められるか、見本があると取り組みやすいか、どこで手が止まりやすいかなど、お子さまの様子を見ながら個別療育を行っています。

 

お絵描きや制作活動を嫌がることに加えて、制作活動や遊びの中で自分で選ぶ・始めることにも気になる様子がある場合は、お近くのゆめラボへご相談ください。

 

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