自閉スペクトラム症(自閉症)のあるお子さまは、「好きなこと」「興味のあること」「得意なこと」がとてもはっきりしている場合が多くあります。
一見「こだわり」に見える特徴も、見方を変えると大きな強みになります。 子どもが安心できる環境の中で、その強みを療育の中にうまく取り入れていくことで、発達障害の特性を生かした学び方や生活の工夫につなげていくことができます。
このコラムでは、自閉症の強みになりやすい「興味・得意」に注目し、どのように療育や日常生活で生かしていくかを、保護者の方と一緒に考えていきます。
児童発達支援事業所ゆめラボでも大切にしている視点をもとに、「今日から試せるヒント」をお届けします。
INDEX
自閉症と聞くと、「集団が苦手」「こだわりが強い」といったイメージを持たれることも少なくありません。
ですが、同じ特徴は「一つの分野を深く掘り下げられる」「細かいところに気づける」といった強みにもなります。
子ども一人ひとりの興味や得意を理解し、それを伸ばす療育は、自己肯定感を育てるうえでもとても大切です。
自閉症のお子さまは、特定の分野にぐっと集中して取り組めることがあります。
電車・恐竜・地図・数字・キャラクター・音楽など、テーマはさまざまですが、「好きなことに対して長い時間集中できる」というのは、まさに子どもの大きな強みです。
たとえば、電車が大好きなお子さまであれば、路線図や時刻表をきっかけに数字や漢字に親しめるかもしれません。
恐竜が好きなら、図鑑をきっかけに文字やことばを覚えたり、絵を描くことで手先の動きの練習になったりします。
このように、「興味の深さ」をうまく学びに結びつけていくことで、子どもの集中力や継続力を無理なく育てていくことができます。
自閉スペクトラム症のあるお子さまは、音・光・におい・触った感じなど、まわりの刺激の感じ方がとても敏感だったり、逆に鈍かったりすることがあります。
この「感じ方の違い」は、生活のしづらさにつながることもありますが、同時に、他の人とは違うユニークな気づきや発想を生み出すこともあります。
たとえば、細かな色の違いに気づきやすいお子さまは、絵や工作で独自の色づかいを楽しめるかもしれません。
音の高さやリズムに敏感なお子さまは、歌や楽器遊び、ダンスなどで力を発揮しやすくなります。 子どもの強みを知り、「これは困りごと」「これは強み」と丁寧に整理していくことで、療育の中でも、その子ならではの良さを伸ばす関わりがしやすくなります。
自閉症のある子どもの強みや得意なことは、一人ひとり違います。
「これができるから強み」「この特徴があるから必ず得意」と決めつけるのではなく、日々の遊びや生活の中で、子どもが自然と集中していること、何度も繰り返したがること、安心して取り組めることに目を向けていくことが大切です。
保護者の方から見ると「こだわりが強い」「同じことばかりしている」と感じる姿も、見方を変えると、記憶力・観察力・集中力・ルール理解などにつながる可能性があります。
ここでは、自閉症の子どもに見られやすい強みや、療育の中で伸ばしていきやすい得意なことについて紹介します。
自閉症のあるお子さまの中には、好きなものに対してとても強い関心を持ち、細かな情報までよく覚えている子がいます。
電車の名前や路線、恐竜の種類、キャラクターの設定、国旗、地図、天気、虫、車、数字など、興味の対象は子どもによってさまざまです。
大人から見ると「同じ話ばかりしている」「好きなものへのこだわりが強い」と感じることもありますが、その背景には、好きなことを深く知ろうとする力や、細かな違いに気づく力が隠れている場合があります。
この強みを療育の中で生かすことで、ことばのやりとりや文字への関心、数の理解、順番を待つ練習などにつなげていくことができます。
たとえば、電車が好きなお子さまであれば、駅名カードを使って文字を読む練習をしたり、路線図を見ながら順番や方向を確認したりできます。
恐竜が好きなお子さまであれば、図鑑を一緒に見ながら名前を言う、特徴を比べる、好きな恐竜を選んで絵を描くなど、学びや表現のきっかけにすることができます。
「好きなもの」を無理にやめさせるのではなく、子どもが安心して取り組める入口として活用することで、学びへの意欲や自己肯定感を育てやすくなります。
自閉症のあるお子さまの中には、文字・数字・記号・図形・マークなどに強い関心を示す子もいます。
まだ会話でのやりとりはゆっくりでも、看板の文字をよく見ていたり、数字を順番に並べることが好きだったり、同じ形や模様を見つけることに集中したりする場合があります。
こうした姿は、保護者の方にとって少し不思議に見えることもあるかもしれません。
しかし、文字や数字、図形への関心は、読み書きや数量感覚、分類、比較、見通しを持つ力につながることがあります。
療育では、その子が興味を持ちやすい形で活動に取り入れることで、「見る」「選ぶ」「合わせる」「比べる」「伝える」といった力を育てるきっかけにできます。
たとえば、数字が好きなお子さまであれば、順番にカードを並べる活動から始めて、「1番目」「2番目」といった順序の理解につなげることができます。
文字が好きなお子さまであれば、好きな言葉や名前を使って、読む・探す・合わせるといった活動に広げることもできます。
図形が好きなお子さまであれば、同じ形を探す、色や大きさで分ける、パズルや積み木で形を組み合わせるなど、手先の動きや考える力を育てる活動にもつながります。
大切なのは、早く勉強として進めようとすることではなく、子どもが「楽しい」「わかる」「もっとやりたい」と感じられる形で取り入れることです。
好きな文字や数字、図形を入口にすることで、苦手な活動にも少しずつ参加しやすくなることがあります。
自閉症のあるお子さまは、細かな違いや決まったルールに気づきやすいことがあります。
いつもと物の置き場所が違う、順番が変わった、色や形が少し違う、予定が変わったなど、小さな変化にすぐ気づく姿が見られることもあります。
この特徴は、生活の中では不安や混乱につながることもあります。
一方で、丁寧に見れば「よく観察している」「違いに気づける」「決まりを覚えやすい」という強みにもなります。
療育では、このような力を生かしながら、ルールのある遊びや順番を守る活動、分類する活動、見本と同じように作る活動などにつなげていくことができます。
たとえば、同じ色のものを集める、同じ形を見つける、見本通りにブロックを組み立てる、カードを仲間分けする、といった活動は、観察する力や考える力を育てるきっかけになります。
また、ルールを覚えることが得意なお子さまの場合、遊びの約束を視覚的に示すことで、集団活動にも参加しやすくなることがあります。
ただし、ルールへの強いこだわりがある場合は、予定変更や予想外の出来事に不安が大きくなることもあります。
そのため、療育では「ルールを守る力」を大切にしながら、少しずつ変更に慣れる経験や、別の方法でも大丈夫だと知る経験も重ねていきます。
細かな違いに気づけることは、子どもの大切な強みの一つです。
その力を生活や遊びの中でうまく生かしていくことで、「困りごと」だけでなく「その子らしいいいところ」として伸ばしていくことができます。
子どもの興味や得意を生かす療育では、「好きなことをただやらせる」のではなく、「学び」や「生活で必要な力」につながるように工夫することがポイントです。
子ども 療育 発達障害という三つの視点をつなぎながら、家庭と児童発達支援事業所の両方で取り組める方法を考えていくことが大切です。
学習場面にうまく入りにくいお子さまでも、「好きなもの」が入ると、自然と集中しやすくなることがあります。
たとえば、文字や数字の学習をするときに、好きなキャラクターのカードやシールを使うと、それだけでやる気が変わる場合があります。
電車が好きなお子さまであれば、駅名のひらがなカードを並べて遊びながら文字にふれる、時刻表を一緒に見ながら「7時」「半」などの時間の読み方を練習する、といった工夫ができます。
恐竜が好きなお子さまであれば、「〇匹」「〇頭」など数える活動や、図鑑の中から同じ種類を探す活動が、楽しい学びにつながります。
このように、興味・得意を「教材」に変えることで、子ども自身が「もっと知りたい」「もう一回やりたい」と感じやすくなり、学びの積み重ねがしやすくなります。
興味や得意は、学習だけでなく、生活のしやすさを高めるためにも役立ちます。
たとえば、スケジュールが好きなお子さまであれば、朝の身支度や帰宅後の流れを絵カードや写真で見えるようにして、「今日やること」を自分で確認できるようにする方法があります。
また、数字が得意なお子さまであれば、エレベーターの階数やバスの番号、時計などを一緒に確認しながら移動することで、外出の見通しが立ちやすくなります。
好きなキャラクターがいるお皿やコップを使って、「このキャラクターが見えるところまでお茶を入れようね」と声をかけると、注ぐ量をイメージしやすくなる、といった工夫も考えられます。
こうした小さな工夫の積み重ねが、「自分でできた」という体験を増やし、子どもの自信や自己肯定感を育てていきます。
療育の場で試した方法をご家庭でも続けていただくことで、生活全体のスムーズさが変わってくることも多くあります。
自閉症のお子さまの「興味」や「得意」は、困りごとと隣り合わせである一方で、その子らしい学び方や生活のしやすさを支える大切な強みでもあります。
大人がその強みに気づき、「どうやって生かせるか」を一緒に考えていくことで、子どもの表情や行動が少しずつ変わっていきます。
児童発達支援事業所ゆめラボでは、子ども一人ひとりの特性や興味を丁寧にうかがいながら、「どんな場面で強みを生かせるか」「ご家庭ではどのように関わればよいか」を保護者の方と一緒に考えていく療育を大切にしています。
「うちの子の得意って何だろう」「どこから支援を始めたらいいか分からない」と感じておられる方も、どうぞ肩の力を抜いてご相談ください。
見学や個別相談では、お子さまの様子を拝見しながら、興味・得意をどう学びや生活に結びつけていくかを、具体的な例を交えてお話ししています。
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